【原理、構造】
- 出力パルス幅 : 0.5ms
- 心房内検出電位 : 2mV
- 心室内検出電位 : 10mV
- 電極面積 : 1~2mm2
- AV delay : 200ms
- 電極周囲組織が電極を覆って抵抗値が上昇するため、刺激闘値は上昇する。
- 刺激には直流電流が用いられる。
- 刺激出力は計測された電圧閾値の2倍以上のセーフティマージンをもって設定する。
- リード被膜が損傷(断線)すると漏れ電流が生じ、リードインピーダンスが低下する。
- 体外式ペースメーカは、電池(9V乾電池が一般的)を使用する。
- 植込み型ペースメーカには、リチウム・ヨウ素電池を使用する。
- リチウム・ヨウ素電池の内部では、リチウムイオンとヨードイオンが結合し、ヨウ化リチウムが形成され、電気の通過性が低下する。その結果、電池内部抵抗が上昇する。
- ペースメーカ本体の材質は、ステンレスやチタンが用いられている。
- 刺激闘値は通電のための電極の表面積の影響を受け、電極面積を小さくすると電流闘値を低減することができ、消費エネルギーを抑えて、ペースメーカの電池寿命の延長が期待できる。
- 刺激電極は白金系の合成電極を用いる。
- 出力パルス幅は0.2~2ms程度の範囲で設定可能であり、最も効率が良いのは0.5msである。
- 経静脈的に穿刺を行う部位は内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈などの比較的血管経が太い部位を用いる。
- 体外式ペースメーカでは、緊急時の応用処置として経皮的体表ペーシングを行う場合がある。
- 心臓再同期療法 (CRT)は左室と右室の収縮同期がずれている心不全の症例に対して、両室を同時に刺激し収縮を同期させ、心不全状態を改善させる治療法である。
単極方式と双極方式、電極カテーテル
- リード電極の先端側の極性はマイナスである。
- 体外式ペースメーカの電極カテーテルは、先端(遠位:distal) 電極と1cm程手前のリング(中枢:proximal)電極をもつ双極型が用いられる。先端電極はマイナス(黒または白色が一般的)、リング電極はプラス(赤色が一般的)に接続される。
- 電極リードには心内膜電極と心筋電極があり、それぞれ単極式と双極式にわけられる。
- 電極リードの被覆には、生体適合性のよいシリコーンやポリウレタンが用いられる。
- 双極電極は単極電極と比べて、
- 筋攣縮を起こしにくい。
- 心内心電図検出の振幅が小さい(電極間距離が短いため)。
- 電極リードの経は太い(1本のリードに2本の導線が必要のため)。
- 外部からの雑音は混入しにくい(電極間距離が短いため)。
- 心電図に現れる刺激パルスが小さい。
- タインド式の電極先端には軟らかい錨状の突起が付いており、心臓内壁の窪みに先端が挿入されると突起が引っかかり固定される。
- スクリューイン式は電極先端をらせん状にしてあり、心内膜側から心筋内にねじ込んで固定する。植込み患者の感染によりリード抜去が必要な場合、スクリューイン式はリードを逆回転させることにより比較的容易に外すことができ。
【種類】
ICHDコード
- 第l文字:ペーシング部位
- 第2文字:はセンシング部位
- 第3文字:刺激の制御方法(インヒビット:抑制、トリガー:動機)
- 第4文字にR (rate response):心拍応答機能を有する場合に用いる
- 第5文字:マルチサイトペーシング
AAIモード
- ペーシングによる心房の興奮が正常な刺激伝導系による左室に伝導するするための生理的ペーシングが可能である。
DDD・VDDモード
- 心房収縮に遅れて心室収縮が起こるので、デュアルチャンバペースメーカでは心房と心室の収縮時間の遅れ(AVdelay) を設定する必要ある。VDDやDDDなどがそれにあたる。
- DDDモードはリードを2本用い、心房と心室の両方でペーシングとセンシングを行う。
- VDDペーシングは、正常調律の心房興奮に同期して心室をペーシングすることにより生理的ペーシングが可能である。
- VDDは洞機能が正常な房室ブロックに用いる。
- DDDペーシングは、心房ペーシングにより心房の正常なリズムを維持し、それに同期して心室ペーシングすることで生理的ペーシングが可能である。
VVIモード
- VVIは電極リード1本(シングルチャンバ)で、心室のみでペーシングとセンシングを行う。
- 心室の最低心拍数を保証するモード。
- 生理的な心房と心室の協調性は得られない。
VOOモード
- 電気メスを使用する場合には、VOOモードに変更する。
- VOOは固定レート型とも呼ばれ、自己心拍が出現してもペーシングは抑制されない。
VVIRモード
- 心拍応答型ペーメーカでは体動や呼吸、血液pH、血液温度、運動による心電図のQT時間などの生理的要求に応じて心拍数を調整する機能がある。
【適応】
- 心臓ペースメーカは徐脈性不整脈の治療に対し施される。
- 洞不全症候群(SSS)
- 完全房室ブロック(第3度房室ブロック)
- 2度房室ブロック(MobitzⅡ型房室ブロック) など
【取り扱いと安全管理】
- 携帯電話は埋め込み部分から15cm以上話す必要がある。
- X線CT撮影によるペースメーカの誤作動に注意する必要がある。
- ペースメーカ患者にハイパーサーミアの使用は禁忌である。
- 体外式ペースメーカでは、カテーテル電極を心臓内に留置して本体を置くので、操作者が電極端子を直接手で触れると操作者を介してミクロショックを起こす可能性がある。
- リード被膜が損傷すると電極インピーダンスは低下する。
- 刺激閾値の低下はペーシング不全の原因とならない。刺激閾値が低下すると、さらに小さな電圧でもペーシングできることになり、ペーシング不全は起こりにくくなる。
- 出力点検時は500Ωの負荷抵抗を接続し、オシロスコープで振幅、パルス幅などの出力確認を行う。
ペーシング不全の原因
- 電極脱離
- リード線断線
- 電磁波干渉
- 電池消耗
植込みペースメーカの誤作動原因
- MRI
- 低周波治療器
- ハイパーサーミア
- 電動工具
- 電気溶接機
- 電気メスによって雑音障害
植込み式ペースメーカに電磁干渉する
- エックス線CT
- 電子商品監視装置(EAS)
- 電子タグ機器(RFID)
- 携帯電話から15cm離すよう推奨されている。