【原理、構造】
- 心室細動ではR波が検出されずR波同期を行うことができない。
- R波同期装置は心室受攻期を外して通電させる。
- 心房性頻拍などではR波同期装置を用いて絶対不応期に通電する。
- 心室細(粗)動では受攻期を考慮する必要がないため、非同期式が用いられる。
- 心静止には無効である。
- 充電は開始後15秒以内で完了しなければならない。
- 患者への酸素供給を停止した状態で通電する。
- 電極の押し付けは5kg程度の力で行う。
- 除細動器の2つの出力端子はどちらも接地されておらず、フローティングされている。
- 単相性では出力波形の振動を早期に減衰させるためにインダクタを用いるが、二相性ではインダクタは用いない。
- 二相波形ではではダンピングは必要ない(ピーク電圧が単相性より低いため)ため、コイルは不要。
- 単相波形ではダンピングさせる。
- 内蔵バッテリには再充電可能なニッケルカドミウム電池、リチウムイオン電池などの二次電池が使用される。
電極面積と出力エネルギー
- 直流電流を使用する。
- 最大出力電圧は5kV以下である。
- 体外通電 : 150~360J
- 体内直接通電 : 20~60J
- 開胸下での通電出力は体外通電時の1/10程度に設定する。
- 出力通電時間は2~5msec程度である。
- 二相性出力は単相性と比べてパルス幅が長い。
- 単相性パルス幅 : 2~5ms
- 二相性パルス幅 : 5~20ms
- 単相性のキャパシタンス : 10~40μm
- 二相性のキャパシタンス : 100~200μF
- 電極面積
- 成人用の体外式通電用電極の面積は50cm2である。
- 成人用直接通電パドルの電極面積は32cm2である。
- 小児用の体外式通電用電極の面積は15cm2である。
- 小児用直接通電パドルの電極面積は9cm2である。
【種類と適応】
体外式 | 植込み式 | ||
手動式除細動器 (DC) |
自動体外式除細動器 (AED) |
植込み型除細動器 (ICD) |
|
対象 | 心室細動(Vf) 心室頻拍(VT) 心房細動(Af) 心房粗動(AFL) 心房頻拍(AT) |
心室細動 心室頻拍 ※意識と呼吸なし |
心室細動 ※Brugada症候群 心室頻拍 |
※心停止は心臓の電気的活動の消失や心室筋の収縮不全でも生じ、これらは電気的除細動の対象外である。
→心静止、無脈性電気活動(PEA)
【AED(自動体外式除細動器)】
- AEDは特別な許可がなくとも一般市民が使用することができる。
- 講習会の受講は推奨されているが、義務付けられてはいない。
- 心電図解析中は心臓マッサージを中止する。
- 倒れている傷病者の意識がない場合に使用する。
- AEDは除細動の必要性の判断から充電までを自動で行うが、除細動出力は自動で行わず、使用者が通電ボタンを押して使用する。
- 通電時には操作者は傷病者や電極パッドに触れないように注意しなければならない。
- ペースメーカまたはICD植込み患者は、電極パッドをジェネレータより約2.5cm離し通電する。
- 体が濡れている際は、タオルなどで水分を拭き取りパッドを装着する。
- 貼り薬をしている患者は、電極パッドを装着する前に貼り薬をはがしてから装着する。
- 酸素ボンベ使用時は、通電を行う際に、酸素ボンベまたは供給装置を患者から遠ざける。
- 小児用電極パッドを使用すれば、8歳未満の小児にも使用可能
適応となる疾患
- 心室細動
- 心室頻拍
AEDの構成
- 心電図解析から充電まで自動で行われる。
- AEDの放電パルスは、二相性(バイフェージック)波形が採用されている。
- AEDの構成要素にはR波同期回路は含まれない。
- 内蔵バッテリーには一次電池が使用されるため、充電は不要である。
- 通電電極には使い捨て電極が用いられる。
- エネルギー量の設定は機器が自動で行う。
- AED出力エネルギー
- 成人 : 150J
- 小児 : 50J
【ICD(植込み型除細動器)】
- 通電時の波形には、Truncated Exponential Biphasic波形という低エネルギーでかつ高効率な二相性波形が用いられる。
- 通電の出力は10~40Jで二相性波形である。
- タイプによってDDD型ペースメーカ機能を兼用できるものもある。
- 除細動の他に、徐脈に対してペーシング機能と頻脈に対して抗頻拍ペーシング機能がある。
- 脈拍を感知すると、頻拍停止機能が作動する。
- R波同期通電機能が備わっている。
- ICDの心室頻拍治療には、抗頻拍ペーシングとカーディオバージョンがある。
- 心房細動などの上室性不整脈は適応外である。
- ICDのリードは右心室に留置する。
- 右室のみ電極を留置するシングルチャンバ方式と、右房と右室に電極を留置するデュアルチャンバ型がある。
- デュアルチャンバ型ICDは心房頻拍を検知できる。
- 除細動出力は本体と除細動リードのコイル電極の間で行われる。
- ICDの電極リードは通電用として2つのスプリング電極が装着されている。
- CRTペースメーカ機能がついた両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(CRT-D)がある。
- 重症心不全では、致死性の心室性不整脈を合併することも多いため、CRT-Dが利用されている。
- ICDのバッテリにには銀酸化パナジウム(SVO)リチウム電池が使用されており、バッテリ寿命は7~8年程度。
適応なる不整脈
- 心室細動
- 持続性心室頻拍
- 器質的心疾患を伴う非持続性心室頻拍
- Brugada症候群
- 先天性QT延長症候群 など
【取り扱いと安全管理】
除細動器のトラブルと対策
- RFID(電子タグ)装置は盗難防止装置として広く使用され、ICDへの影響は、一般的に電波の強度が強いほど大きくなる。
- T波のオーバーセンシングは不適切動作の原因となる。
体外式除細動の性能点検
- 通電テストには50Ωの負荷抵抗を用いる。
- バッテリ式の除細動器では、バッテリが劣化するとエネルギー充電時間が延長する。
- 出力波形は、パルス幅2~5msのダンピング波形。
- 電極部と体外外装部との浮遊静電容量は2nF以下と規定されている。
- 充電時間は最大エネルギー設定時15秒以内と決められている。
- 最大エネルギーに充電したあと、30秒または内部放電機構がはたらくまでのいずれか短い期間に、その出力エネルギーは85%以上を保たれていなくてはならないとしている(負荷抵抗50Ω)。
日常点検
- 外装点検
- 作動点検
- 備品チェック(電極パッドなど)
- バッテリ残量
- 表示ラベル
- インジケータ
定期点検
- 同期感度(AEDでは不要)