【原理、構造】
- 2450MHz(波長12cm)のマイクロ波を用いる。
- 電磁波の生体組織内の波長は約1~2cmである。
- 誘電熱を利用し実質臓器の止血・凝固・部分切除を行う。
- 切開作用よりも、凝固・止血作用を重視したメス。 →鋭利な切開はできない。
- 凝固範囲は電極の形状により変化する。
- マイクロ波は電極周囲で減衰するため、対極板は不要である。
- マイクロ波の作用原理は、誘電損失による発熱である(誘電熱の発生を利用)。
- 電極部は基本的に、中心電極、絶縁体、外部電極で構成されている。
- 直流電流により電極に水分が集まり、付着した凝固組織が軟化する。
- 生体への電磁波通電のため、心電図モニタに対する電磁波障害が発生する。
- 内視鏡手術に用いることができる。
- マイクロ波は、マイクロ波出力用同軸ケーブルにて伝送される。
- 組織中の水分にマイクロ波が作用して発生する誘電熱を利用する。
- 出力エネルギーは組織の水分に吸収される。
- 組織の比誘電率は波長に反比例するため、比誘電率が大きいほど波長は短くなる。
- 手術電極に付着した組織を解離させるため直流電流を流す。(組織解離装置)
- 出力同軸ケーブルはガス滅菌する。
【マイクロ波の特性】
- 周波数0.3~30GHz
- 波長が1cm~1mの電磁波
- 医療分野では2450MHz(波長12cm)
- マイクロ波は金属の様な導電体の表面では反射されるが、水のような誘電体(絶縁体)ではそのほとんどが吸収され熱に変換される。
- 伝達特性は誘電体によって変化し、生体内のマイクロ波の波長は空気中に比べ短く、途中で減衰してしまうので伝達距離は1~2cm程度である。
- エネルギーは生体内の水分に吸収されるため減衰しやすい。
- マイクロ波は電極周囲で減衰してしまうので、電気メスのような対極板は必要ない。
誘電熱
- マイクロ波手術装置では2450MHzのマイクロ波を用いるので、1秒間に2450×106回の頻度で電解のプラスイオンとマイナスイオンが入れ替わる。
- 水分子の配向も同じ回数だけ変化するので、物質間の衝突や摩擦が起こり、熱が発生する。
- 誘電体損失での熱の発生、これを誘電熱と呼ぶ。(被加熱物自身の発熱による)
- 電極を接触させた組織に誘電熱が発生すると、組織は凝固を起こす。
- 誘電熱による発熱量はマイクロ波の周波数と誘電損失係数 【比誘電率(εr)×誘電体損失角(tanσ)】 に比例する。
- 凝固が進むと組織の水分は蒸発し、水分量は減少することになるので誘電熱は発生しなくなり、自動的に凝固は止まる。したがって過剰凝固することがないので、組織の炭化を防止することができる。
- 鋭い切開機能は持たない。
【取り扱いと安全管理】
- 他の医療機器に電磁波障害を起こすことがある。
- 使用中に可燃性ガスを併用しない。
- 手術電極付近では電気メスを併用しない。
- 電気メスと併用すると、高周波電流によってマイクロ波メスが誤作動あるいは電子回路が破損することがあるので同時に使用しない。(超音波メスとの併用は可能)
- マイクロ波は極超音波の電磁波のため、他の機器に電磁波障害を起こす。
- 解離電流の影響でペースメーカが誤作動を起こすことがある。
- 心臓内カテーテルが入っている場合には、解離電流の影響で心室細動を起こすことがある。
- 心電図モニタに雑音が混入し心電図波形が得られなくなることがある。