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血液透析事故対策

【静脈圧の上昇、下降

静脈圧上昇 静脈圧下降
静脈チャンバー内が凝固した

返血針の固定がずれて血管抵抗が増えた

 静脈チャンバーから返血針までの血液回路が折れ曲がった

除水過多やシャント再循環によって回路内が過濃縮した

血栓や蛋白物質がチャンバーメッシュor 針先に詰まった

血流速度を上げた

輸血を開始した
患者さんが体位変換し、血管抵抗が下がった

返血針の抜針

生理食塩水などを補液した(血液の粘稠度が下がった)

 血流速度をさげた

脱血不良である
 
 

【動脈圧の上昇、下降】

  • 動脈側回路内圧上昇は、動脈圧計の付属する動脈チャンバ以降での回路閉塞や、ダイアライザ凝固などが考えられる。

 
 
【空気誤入】
原因 

  • 気泡混入は血液ポンプの上流側(回路内圧は陰圧)で起こる可能性が高い。
  • 動脈側留置針の抜針
  • 動脈側留置針と回路の接続部の接続不良
  • 動脈側アクセスポートの破損、同部よりの補液
  • 補液ラインよりの閉鎖忘れ
  • 回路(ポンプ部など)の破損
  • 気泡検知器の動作不良
  • 返血操作のミス
  • 血液ポンプ流量低下時
    • 動脈チャンバ液面調節ラインの閉鎖不良
    • 抗凝固薬ラインの接続不良など
  • 静脈圧低下時
    • 静脈チャンバ液面調節ラインの閉鎖不良、微小気泡の通過
    • 静脈圧ラインの接続不良など

 
 症状

  • 激しい咳、胸内苦悶、血圧低下

 
処置

  • 血液透析中の空気誤入の際には、まず血液ポンプを止め、鉗子等により静脈側回路を遮断する。
  • 患者を左側臥位にしてトレンデレンブルグ体位(頭を低くし、下肢を挙上する)とし、脳、肺への空気の混入を防止する。
    • この体位を取ると、体内に入った空気は静脈系より右心房に戻り肺循環へと流れるため、一気に大量の空気が肺に送られるのを防止し、さらに、誤入した空気が肺循環から左心房に戻り体循環へと出た場合でも、空気が脳へ行くことを防止する目的である。
  • 直ちに酸素吸入を行い、高気圧酸素療法も有効となる。
  • 薬剤の投与に関しては、100 %の酸素吸入、ショック様症状などが見られる場合にはステロイド剤の投与が行われるが、血栓溶解剤の投与は血栓による塞栓の場合には行われるが、空気混入あるいは空気塞栓では投与されない。
 
  

【出血】

  • 抗凝固薬注入ラインの外れ
    • ガイドラインに適合した血液回路では、抗凝固薬注入ラインは血液ポンプの出口から動脈側ドリップチャンパまでの回路中に設置されている。したがって、抗凝固薬ラインは陽圧になっているため、そのラインから血液が漏れ出る可能性が高い。
  • 静脈側の穿刺針と血液回路の接続不良
    • 静脈側の穿刺針と血液回路は陽圧になっているため、接続不良箇所から血液が漏れ出る可能性が高い。
  • 静脈側の血液回路内圧測定ラインの脱落
    • 静脈側回路内圧測定ラインは陽圧になっているため、圧測定ラインが透析用監視装置から外れると、そのラインから血液が漏れ出る可能性が高い。
  • ダイアライザ直下の静脈側アクセスポートの破損
    • ダイアライザ直下の静脈側アクセスポート部分は陽圧になっているため、アクセスポートが破損すると血液が漏れ出る可能性が高い。
 
 

【凝血】
原因

  • へパリン不足、プロタミン過剰、へパリンポンプの故障、血液の異常停滞。

 
症状

  • 透析器、回路が暗赤色(黒褐色)
  • 静脈圧の上昇

 
処置

  • へパリン増量、ウロキナーゼ投与

 
 
【血流量低下】

  • 血圧低下が原因となることがある。 →血圧を測定する。
  • 患者の体動によって血流低下が起こることがある。 →動脈側針先が血管壁面にあたる。
    • 動脈側穿刺針の固定を調整する。
    • 動脈側穿刺側の肘が曲がっていないかを確認する。
  • 凝血が起こることで血流が低下する →動脈側回路内凝固確認。
 
 

【漏血警報】

  • 中空糸破損が発生した場合、透析液中への血液漏出が発生するため、漏血警報が発生する。
  • 漏血はダイアライザの落下や、膜への過剰な圧力による膜破損が原因となる。
  • 脱血不良などによる溶血により作動することや、漏血センサ部の汚れによる誤作動も少なくない。
  • 患者監視装置の漏血警報が作動したら透析液の停止、血液ポンプを低速にする。
  • 血液回路内が陰圧(脱血不良等による)になっていないか確認する。(陰圧になっていると透析液が血液中に流入する危険性が増加する。)
  • まず、目視にて中空糸表面及びダイアライザの透析液出口で漏血を確認する。漏血検出器は受光部の汚れによる誤報もあることから目視による確認が不可能な場合は、ダイアライザの透析液出口から透析液を採取し、尿潜血検査試験紙で確認する。
  • 目視で漏血が認められた場合や、その可能性が高い場合〈尿潜血検査試験紙で陽性の場合)はダイアライザ内の透析液をバケツ等に排出しながら生食にて置換返血する。
  • 血液の漏れが激しい場合は、返血せずダイアライザごと廃棄する。
  • 抗生物質の投与は透析液の浄化レベルや膜破損の程度により判断する。
  • 大量の失血がある場合はバイタルサイン、へマトクリット、ヘモグロビンを確認し、必要に応じて輸血、輸液の準備を行う。
  • 目視や尿潜血検査試験紙による確認の結果、漏血の可能性が否定的な場合は漏血検出器の受光部等の点検、メンテナンスを行う。

 
 
【抜針事故】

  • l   即座にポンプを停止し体外循環を停止すべきである。
  • l   認知症や不穏状態の透析患者については、家族あるいは保護者との面談を行い、止むを得ない場合の対処として四肢の抑制等の同意を得ておく必要がある。
  • l   抜針事故の場合、出血量によっては患者の生命を脅かすこととなる。
  • l   穿刺針、血液回路は抜けないようにテープ固定を確実に行い、透析中の患者の体動など考慮してゆとりを持たせた固定をすることが重要である。

 
 
【透析液の異常】

  • 濃度異常には、希釈水の異常、希釈装置の異常、濃度計の異常、原液の異常がある。
  • 透析液汚染には、不完全な水処理、水処理装置の異常、消毒薬残留(洗浄不足)、配管からの溶出、細菌増殖、エンドトキシン混入がある。
  • 透析液濃度は電導度による監視がおこなわれるため、透析液の濃度異常だけでなく電導度を測定するセルの故障でも警報が発生する。

 
 
【硬水障害】

  • 水道水中にはマグネシウム、カルシウムが入っており、水道水を未処理のまま用いると、硬水症候群を発症させる。

 
 
【温度異常】

  • 温度異常には、ヒーターの異常、サーミスタの異常、温度表示部の異常、供給水の温度上昇・低下がある。
  • 透析液は低体温症防止のために、体温程度に温められてダイアライザに供給される。
  • 異常加温や加温不足が発生した場合は、ヒータや温度計、サーモスタットの故障が原因と考えられる。
 
 

【異物混入】

  • 原因 : 配管、水処理装置の故障
  • 症状 : 硬水症候群、胸内苦悶
  • 処置 : 透析液回路の洗浄、消毒

 
 
【溶血】

  • 溶血の原因は、血液回路の屈曲による過度の陰圧が考えられる。

 
 
【過除水】

  • 過除水や除水不足は除水ポンプの制御異常や、除水計算ミス、体重測定ミスが考えられる。

 
 
【その他】

  • 誤穿刺をした場合、患者の信頼を失う前に、交代した方がよい場合もある。
  • 透析終了後の採血は動脈側回路から行う。