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透析長期合併症

【腎性骨異栄養症】

  • Ca、P 代謝異常、ビタミンD代謝異常をもとに二次性上皮小体(副甲状腺)機能充進症など多数の因子が関与し、骨軟化症、繊維性骨炎、異所性石灰化などを呈する。これら腎不全における骨代謝異常を総称して、腎性骨異栄養症という。
    • カルシウムの値は低くなる。
    • リンの値は高くなる。
    • Ca × P値≧55になると異所性石灰化が生じる。
  • 腎性骨異栄養症の全般の治療として保存療法がある。 →生活指導、運動療法、薬剤療法、栄養指導

 
二次副甲状腺機能亢進症

  • 疾患概要
    • 低Ca、高P血症がきっかけなり起こる。
    • ビタミンDが活性化されず、腸でのCa吸収障害が起こる。
    • 血液中のCa濃度が低下するため、副甲状腺からPTHが分泌され破骨細胞(骨吸収)を刺激し、骨からのCa遊離を促す。
    • 腎不全患者さんは、その状態が慢性的に続き、二次副甲状腺機能亢進症となる。

 
異所性石灰化

  • 疾患概要
    • Ca×P値が高いと、血管や組織にCaが沈着する。

 
治療

二次副甲状腺機能亢進症 高P血症 異所性石灰化
活性型ビタミンDの投与

リン吸着剤の内服
  →炭酸カルシウム剤
  →塩酸セベラマー
  →酸化水酸化鉄【第二鉄(3価鉄)】など

破骨細胞(骨吸収)の働きを抑える
  →カルシトニンの投与
  →エストロゲン投与
  →ビスホスネート投与

PTHの分泌が過剰であれば
  →副甲状腺摘出術
  →エタノール注入法

運動療法
リン吸着剤の内服
  →炭酸カルシウム剤
  →塩酸セベラマー
  →酸化水酸化鉄【第二鉄(3価鉄)】など

低P食事療法


Pの抜け(除去)のよりダイアライザへの変更


十分な透析量を確保する。


活性型ビタミンDの減量または、中止。
  →Ca×P値が上昇すると異所性石灰化のリスク大。そのためCa値もP値も下げる必要あり。
高Ca血症の時
  →カルシウム製剤や活性型ビ
タミンD製剤の調整

  →透析液のCa濃度を下げる

高P血症の時

  →リン摂取の制限(食事療法)
  →リン吸着剤の内服
  →透析効率を上げる
 
 

【手根管症候群】
疾患概要

  • β2ミクログロブリンの沈着が原因。
  • 手根管(手首)の神経に、アミロイド(β2ミクログロブリン)が沈着し、神経を圧迫し、指先がしびれる。

 
治療

  • ダイアライザの性能を良くする
  • HDF療法
  • リクセル(β2吸着カラム)
  • 透析液の清浄化

 
 
【透析アミロイドーシス】

  • β2-ミクログロブリンの蓄積によりアミロイドを生じ、これが全身諸臓器に広範囲に沈着し、透析アミロイドーシスを呈する。このアミロイド沈着が、滑膜、靭帯、骨に起こると、手根管症候群として認められる。β2-ミクログロブリン除去のため、高性能膜の開発がなされ、広く使用されている。
  • 手根管症候群では手根管開放術によってアミロイド線維の除去を行う。

 
 
【アルミニウムの蓄積】

  • アルミゲル(P吸着剤)の長期投与と透析液の水処理が不十分な場合に、体内への蓄積が起こり、貧血、アルミニウム骨症(骨軟化症)、アルミニウム脳症を引き起こす。
  • 透析の患者さんにアルミゲルの使用は禁忌

 
 
【心不全】

  • 高血圧、貧血、シャント、高K血症などいろいろな因子が心機能に影響するが、重要なものはNaと水分の過剰、すなわち容量負荷による心不全である。
  • 不整脈の発生頻度は高い

 
 
【脳血管障害】

  • 脳出血、脳梗塞、脳塞栓などが主で、高血圧、動脈硬化が危険因子となる。

 
 
【心包炎】

  • 尿毒症性物質による無菌性心外膜炎が多いため適正な透析治療により改善。

 
 
【高血圧】

  • 透析導入期には70~80%にみられ、その2/3はNa、水の過剰による容量負荷に起因し、残り1/3はレニン依存性の高血圧によるといわれている。

 
 
【貧血】

  • 腎におけるエリスロポエチンの産生低下、赤血球破壊の充進、出血、採血などによる損失、栄養障害、アルミニウム蓄積などが原因となる。
  • エリスロポエチン製剤の投与、鉄剤投与

 
 
【感染症】

  • 透析患者では、白血球機能の低下、細胞性免疫および液性免疫の低下のほか、シャントの存在、輸血によるC型肝炎(非A非B型肝炎)などがあり、易感染症、脆弱抵抗性である。結核は一般人に比べて高率である。
  • 標準予防策(スタンダードプリコーション)を適用する。
  • 透析装置の外装は透析終了後毎に500~1000ppm次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。
  • 透析中の経静脈薬物投与は、針刺し事故防止のため血液回路の静脈回路ラインに注射器を接合し投与する。
  • 針刺し事故が発生した場合、速やかに流水で傷口を流す。その後、施設のマニュアルに従う。

 
透析患者さんの院内感染で注意すべき感染症

  • B型肝炎、C型肝炎
  • HIV
  • MRSA
  • 結核
  • HTLV-1(ATLV)
  • バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
  • インフルエンザ  など

 
 
【末梢神経障害】

  • 尿毒症性神経炎、自律神経障害が特徴的である。

 
 
【悪性腫瘍】

  • 一般人に比べてその発生率は高いとされており、胃癌、子宮癌が多く、定期検診が必要である。まだ多嚢胞化萎縮腎に腎癌の合併がおおいことが報告されている。

 
 
【アシドーシス】

  • 骨が緩衝系となりCaの遊離が促進される →高Ca血症

 
 
【低Ca血症】

  • ビタミンD活性化作用が少ないため腸からのCa吸収が抑制される。
  • 活性型ビタミンD製剤投与。

 
 
【高リン血症】

  • 低リン食の食事療法
  • リン吸着剤投与
    • 塩酸セベラマー
    • 炭酸Ca製剤
  • l禁忌薬 : アルミゲル →リンを吸着するが、アルミニウムの沈着が問題となり、現在では使用禁止。
  • リン透過性の良いダイアライザの選択をする。