【血液浄化器の選択】
- 血液透析導入初期は、不均衡症候群を発症させる危険性があるため、膜面積の小さい低効率の血液透析器を選択する。
- 膜面積を大きくするとクリアランスは大きくなる。
【種類】
中空糸型ダイアライザ
- 血液透析器の主流は中空糸型であり、血液は中空糸束の中心ほど流れやすく、透析液はハウジング(外筒)近傍ほど流れやすい構造となっている。
中空糸型 標準的仕様
- 膜面積: 0.4~2.2m2
- 中空糸本数: 5000~15000本
- 中空糸内径: 200μm~300μm
- 膜厚: 10~60μm
- 有効長: 150~250mm
- ハウジング(外筒)内径: 5cm
- 耐圧: 500mmHg
- ポアサイズ: 20~60Å
- プライミングボリューム: 150mL前後
積層型ダイアライザ
- 積層型(平板型) →シェアは少ないが、使用されている。
- AN69膜はスルホン酸基の存在により含水率が高く、ハイドロゲル状で高い親水性を有し陰性荷電による炎症性サイトカインの吸着特性がある。
- 積層型は数層の平らな固定版の間に透析膜をはさみ、透析膜の間を血液が流れ、透析膜と固定板の間を透析液が流れる構造になっている。
内部濾過型ダイアライザ
- 内部濾過促進型ダイアライザは、透析治療において中空糸内で濾過を促進させる構造を持つものを指し、中空糸の内径、充填率、有効長が濾過効率に影響する。
- 内部濾過促進型はあくまで透析における濾過の促進を目的としており、治療に濾過を用いる血液透析濾過では、浄化器に内部櫨過を促進させる必要がない。
【ダイアライザの滅菌法】
- ガンマ線滅菌
- 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)
- 電子線滅菌
- EOG滅菌 →現在用いられることは少ない。
【構造】
- ダイアライザ内での拡散効率を維持するため対向流操作(血液と透析液を逆向きに流すこと)により、血液と透析液をそれぞれ逆の方向から流している。
- 中空糸の内側には血液が流れる。
- 中空糸束の中心部ほど血液が流れやすい。
- 中空糸の外側には透析液が流れる。
- 中空糸束の外側(外筒近傍)ほど透析液が流れる。
【ダイアライザの膜素材】
再生セルロース(RC)膜
- 現在は生体適合性の観点より使用せず
セルロースアセテート膜
- セルロースアセテート膜は補体活性作用が弱い。
酢酸セルロース
- 再生セルロース膜の補体活性作用は構造にあるOH基が原因であり、このOH基をアセチル基(酢酸基)に置換したものが酢酸セルロースである。
- そのため再生セルロース膜と比較して補体活性作用が抑制されている
ポリアクリルニトリル(PAN膜)
- 原料は疎水性のアクリルニトリルに親水性ビニルモノマーを共重合させたもの。
- アクリル酸系ナトリウムの共重合体の「旭PAN」とメタルスルホン酸との共重合体の「ホスパルPAN」がある。
- 濾過膜や濾過性能の高い透析膜として、生体適合性に優れている。
- ポリアクリロニトリル膜(AN69膜)はスルホ基を有し、表面は強く陰性荷電している。
- これによりタンパク吸着特性を持つ一方で、降圧薬であるACE阻害薬を服用している患者に使用すると、ブラジキニンの代謝が抑制され血圧低下やショックを引き起こすことがある。
ポリメチルメタクリート(PMMA膜)
- ポリメチルメタクリレート膜は、素材との相互作用によって高いタンパク吸着能を持つ。
- ポリメチルメタクリレート膜は、膜自体にβ2ミクログロプリンやα1ミクログロブリンなどのタンパク質を吸着する特性を持つ。
- 膜特性として吸着を主としているため、膜の経時劣化が激しい。
- セルロース系と比して膜厚が大きい。
- 透析中の顆粒球エラスターゼの上昇の報告がある。
- 中分子吸着除去に優れている。疎水性が高いため、血漿タンパクが膜に付着しやすい。
エチレンビニルアルコール(EVAL膜)
- エチレンビニルアルコール共重合体膜は、エチレンとビニルアルコールをラジカル共重合させ、酢酸部分を加水分解して水酸基(-OH) に置換している。
- この水酸基があることで、親水性を持つため、親水化剤は不要である。
- エチレンビニルアルコール膜は血液潅流部の膜表面に水和層を形成するため、タンパク質や血小板の吸着が起こりにくく、血栓の形成が抑制される性質を持つ。
- 血小板系、凝固系に対する影響がなく抗血栓性に優れている。
- PVP(親水化剤)を使用していない。
- 補体への影響が軽度とされている。
- アミノ酸漏出量を抑える効果があるとされている。また、アルブミン・タンパク漏出が少ない。
ポリスルフォン(PS膜)
- ポリスルホン膜は、物質分離に寄与する緻密層と機械的強度を担保するための支持層からなり、このような構造を持つ膜は、非対称膜と呼ばれる。
- ポリスルホン膜は疎水性の'性質を持つ。そのため血液の凝固活性を起こすため血液灌流部はPVP(ポリピニルピロリドン)により親水化処理が施されている。
- 日本国内で一番使用されているダイアライザ。
- 小分子物質からβ2-MGに至るまで比較的高い溶質透過性がある。
- 比較的構造が簡易であり、安定性、生体適合性が良いのが特徴である。
- 小分子物質からβ2-MGに至るまで比較的高い溶質透過性、透水性も優れている。構造は非対象構造。
- ハイパフォーマンス膜であり、内部濾過のため、β2-MGなどの中分子除去に優れている一方、アルブミン漏出量が多く、低栄養・高齢者の患者には不適切である。
- ポリスルホンは荷電に関する官能基を持たないため、ほとんど荷電を持たない。
ポリエステル系ポリアーマロイ(PEPA膜)
- 透析液清浄化に使用されるエンドトキシン捕捉フィルタの中空糸素材
ポリエーテルスルホン(PES)
- 透析液清浄化に使用されるエンドトキシン捕捉フィルタの中空糸素材
- ポリエーテルスルホン膜は非対称構造を示す。
均一構造
- セルロース系膜全般
- ポリメチルメタクリレート膜(PMMA)
- エチレンビニルアルコール(EVAL膜)
非対称構造
- ポリスルホン(PS)
- ポリアクリロニトリル共重合体(PAN)
- ポリアミド(PA)
- ポリエーテルスルホン
- ポリエステル系ポリアーマロイ(PEPA膜)→透水性が非常に高く、血液濾過に用いられる。
PVP(ポリビニルピロリドン)を用いた透析膜
- ポリスルホン(PS)、
- ポリエーテルスルフォン(PES)
- ポリエステル系ポリマーアロイ(PEPA)
【ダイアライザの性能評価】
ダイアライザの性能を表わす指標には以下に示すものがある。
溶質透過性 | クリアランス:CL(mL/min) | ダイアリザンス:DB(mL/min) |
総括物質移動面積係数:KOA(mL/min) | ||
透水性 | 濾過係数:LP(mL/(hr×㎡×mmHg)) | 限外濾過率:UFRP(mL/(hr×mmHg) |
溶質分離特性 | ふるい係数:SC |
クリアランス
- 血流量が多くなるほどクリアランスは増加するが比例はしない。
- 溶質のクリアランスは血流量を超えない。
- 膜面積が広いほどクリアランスは増加する。
- 透析液流量の増加とともにクリアランスは増加するが、透析液流量400~500ml/min程度で尿素のクリアランスはほぼ頭打ちとなる。
- クリアランスは基本的に時間に依存しない。
- 限外濾過量を増せば、クリアランス値は増加する。その意味は、限外濾過で除去される水分とともに小分子量の物質も除去されるからである。
ふるい係数
- ふるい係数が小さい溶質は膜を通過しにくい。
- ふるい係数は溶質分離特性を表す。
- ふるい係数の小分子タンパクでは、血液系より水系の方が高い値を示す。
- ふるい係数は0~1の間で、プラスの値となる。
- ふるい係数に単位はない(無次元)。
【クリアランス計算】
臨床工学技士国家試験 第33回
ある血液透析器の水系溶質除去性能を調べるため、透析器血液流入側と流出側のクレアチニン濃度を測定したところ、それぞれ10.0、および1.0 mg/dLであった。血流量、透析液流量、濾過流量がそれぞれ250、500、0 mL/minとすると、この血液透析器のクレアチニンクリアランス[mL/min]はいくつか。
臨床工学技士国家試験 第24回
血液透析を次の条件で施行した。
血流量200ml/min、
透析液流量500ml/min、
限外濾過流量10ml/min
このとき、動脈側尿素窒素濃度は100mg/dl 、透析液出口尿素窒素濃度は30mg/dlだった。
この透析器の尿素クリアランス[ml/min]いくつか?