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人工心肺中のモニタリング

【生体側】

  • 動脈圧(灌流血圧) 
      • 60~100mmHgに維持することが望ましい。
      • 臓器の灌流状態の指標となる
      • 通常は橈骨動脈にカテーテルが留置され、観血的持続的動脈圧の測定が連続的に行われる。
  • 中心静脈圧 : 0~10cmH2O
      • 循環血液量を反映する。
  • 中心静脈圧、右房圧、左房圧、肺動脈喫入圧 →スワンガンツ・カテーテルを用いる。
  • 尿量・性状
      • 動脈圧(灌流圧)の低下により腎血流が低下する。尿量はこの腎血流量の目安となる。
      • 尿量は1mL/kg/時以上
  • 心電図
  • 温度(深部、血液)、直腸温
      • 体温の連続モニタリングには脳温を反映する咽頭温、大動脈表面温を反映する食道温、深部体温を反映する膀胱温や直腸温などがある。連続測定のためサーミスター温度計が用いられている。 ※食道温は直腸温に比べて変化が早い。
  • ボリュームバランス
  • 血液・生化学的検査(血液ガス、電解質)
      • 手術中は定期的(間欠的)い血液ガス分析を行う。
      • 体外循環中は頻回に動脈血を採取し、pH、PO2、PCO2、base Excess、酸素飽和度を測定する。
  • ACT値
      • ACTは定期的(間欠的)に測定を行い、目視的に異常が疑われれば即座に測定する。
      • 480秒以上
  • 心筋保護液注入量・温度・時間・圧力
  • ガス吹送濃度・量
      • ガス吹送量 :PaCO2
      • 酸素ガス濃度 :PaO2
  • 経食動心エコー
      • 心機能(全体的・局所的)、心臓の大きさの評価、弁逆流や心腔内の残存気泡のチェック、さらには送血カニューレ挿入部位の末梢となる大動脈弓部にかけての内壁の性状チェックなど、多くの有用な情報を得ることができるため、必須のモニタである。
  • SvO2モニタ

 
左房圧(LAP)

  • 左房圧(LAP)は体外循環において、離脱時における心臓が血液を拍出するのに必要な血液量を表す全負荷の指標となる。
  • 直接、左房圧を測定する場合もあるが、肺動脈カテーテルを用いて、先端のバルーンを拡張することで肺動脈喫入圧(PAWP)を近似した圧として測定する。
  • PAWPは左心房圧(LAP)と同等であると考えられ、また、左室拡張末期圧(LVEDP)≒左室前負荷と同等の値となることが知られている。

 
 
【機械側】

  • 陰圧コントローラ
  • ポンプの作動状況
  • 酸素ブレンダ作動状況
  • 温度監視装置
  • 圧測定装置
  • 各種タイマ作動状況
  • 冷温水供給装置
  • 心筋保護液供給装置
  • 電源系統の安全確保
  • 液面監視装置
  • 各種モニタ類
  • 送血温
  • 脱血温
  • 送血圧
  • 貯血槽レベル
  • 脱血側静脈血酸素飽和度
  • 送血流量

 
 
【安全装置設置基準】

  • レベルセンサ(アラーム付き)を貯血槽に設置する。
  • 心筋保護液の注入圧をモニタする。
  • 送血ポンプの手動装置を常備する。
  • 混合静脈血酸素飽和度をモニタする。
  • 気泡センサを送血回路を取り付ける。
  • 送血圧をモニタする。

 
 
【血液ガス分析(カテーテル採血含む)】
血液ガス分圧の調節

吹送ガス流量を減らす PaO2は低下、PaCO2は上昇
吹送ガス濃度を上げる PaO2は上昇
吹送ガス濃度を下げる PaO2は低下
  • 呼吸性アシドーシスのときは吹送ガス流量を増やす。
  • SvO2は脱血回路でモニタリングする。
  • SvO2は酸素消費後の静脈血の酸素飽和度であるため、生体の酸素需要が増加すれば、SvO2は低下する。
  • SvO2を70%以上に維持する。SVO2は100%を維持する。
  • PaCO2が正常値よりも高いとアシドーシスである。
  • PaCO2を上げるためには吹送ガスの酸素濃度FIO2を増加する。

 
酸塩基平衡の管理

  • 低体温中は血液の酸塩基平衡にも変化をきたす。
      • pHは1温度1℃低下するに従い0.0147上昇する関係にある。
      • 温度が低下するにつれて、CO2の溶解濃度は上昇し、PaCO2は逆に低下するため、pHは上昇しアルカローシスを呈する。
  • 酸塩基平衡の管理にはα-stat法とpH-stat法がある。
      • α-stat法 : 体温を37℃に換算する方法は広く用いられている。
      • pHスタット法 : 体温変化に関わらずPaCO2を40mmHgに維持する方法。

 
混合静脈血の酸素飽和度(Svo2

  • 低体温にすると酸素消費量が減少することから高めになるが、70%以上あれば末梢組織への酸素供給は十分と考えてよい。
      • 灌流量が不足すると混合静脈血酸素飽和度は低くなる。
      • 過度に流量希釈によって低下する →ヘモグロビンの低下により
      • 50%では嫌気性代謝が亢進する。
      • 生体の酸素消費量の状態によって変化する。

 
酸素飽和度測定装置が低値を示した場合の対処法

  • 酸素飽和度測定装置は酸素消費量や組織レベルの酸素濃度変化を反映する。
  • 対処法としては、末梢血管を開き、末梢循環を良好に保った上で、灌流量と酸素濃度を上げる。
  • また低ヘモグロビン状態であれば、輸血と濃縮を呼なうことも必要となる。
  • 通常、静脈血酸素飽和度は70~80%以上確保するのが望ましい。

 
その他
例)血液ガスを測定したら、pH=7.20、PaO2=200mmHg、PaCO2=50mmHg、HCO3-=25mmol/Lであった。この時の人工心肺操作はどのように行うか。
 
人工心肺中の血液ガスの目標値

  • pH : 7 .40±0.05
  • PaO2 : 200~300 mmHg
  • PaCO2:35~45 mmHg
  • HCO3-:24±4 mmol/L

 
問題文の血液ガスのデータは、 pH=7.2 なのでアシドーシス、 PaCO2 = 50 mmHg は高値、HCO3- = 25 mmol/L は、基準内のため、 PaCO2を下げることを考える。
よって酸素流量を上げれば良い。
 
 
【体外循環開始前のチェック項目】

 
患者側 体外循環側
□  身長
□ 体重
□ 体表面積
□ 血液型
□ 血液ガス、電解質データ
□ 体温
□ 電源、回路の接続、医療ガスの接続
□ 冷温水槽の温度(42℃未満)
□ 温度計
□ ポンプチューブ圧閉度
□ 薬液
□ 回路内のプライミング液の温度
□ 医療ガスの接続
□ 送血温度