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体外循環と血液

 【血液成分の変動】
<上昇>

  • バゾプレッシン(ADH)
  • アドレナリン(エピネフリン)
  • カテコラミン(コルチゾール)
    • →開始直後においては希釈によって低下し、やがて分泌が亢進する。
  • 血糖値は上昇する。
      • インスリンは、膵血流量低下により分泌は低下する。
  • エイコサノイド系:プロスタグランジン、プロスタサイクリン上昇
  • 白血球
  • レニン-アンジオテイシン系 →活性化
  • 遊離へグロビン
  • 血液粘度 →低体温
  • 末梢血管抵抗
  • 遊離脂肪酸
  • 遊離ヘモグロビンは増加する。 
    • →血球破壊による溶血により
  • 心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)
  • 血小板第Ⅳ因子 →血小板の顆粒現象の進行を示唆
  • 成長ホルモン →坑外傷作用を有するため、体外循環中の侵襲により上昇
  • ブラジキニンの遊離亢進
  • サイトカイン →単球、マクロファージの活性化により、IL-1、IL-6、IL-8、TNFが上昇
  • IL-6 は、体外循環中急激な血中濃度上昇 →体外循環終了と共に速やかに減少する。
  • 炎症性サイトカイン →活性化
  • 補体:活性化が生じ、C3a、C5aの亢進
  • エンドトキシン濃度 →体外循環中の低灌流や定常流による肝臓の類洞に存在するクッパー細胞の機能低下により上昇

 
<下降(低下)>

  • 血小板数(30~50%減少)
  • カリウム
      • インスリン使用時
      • 低体温
      • アルカローシス
  • ナトリウム
  • カルシウム
    • →保存血を使用すると添加されたクエン酸ナトリウムの関係により
  • インスリン →分泌低下
  • 膠質浸透圧
  • Tリンパ球
  • 甲状腺(T3)
  • 免疫(IgG、IgA、IgM)
  • 顆粒球、リンパ球の減少
  • T細胞やNK細胞の活性化が低下する。
  • 血中ハプトグロビンは減少する。
  • 末梢血管抵抗 →低体温
  • 補体系、キニン・カリクレイン系 
    • →活性化する →消費
  • IgG、IgA、IgM 体外循環中減少
    • →術後1週間で正常に回復。

 
その他

  • IL-1β
      • 体外循環中血中濃度の上昇は示さず、術後早期に一過性の有意な上昇を示す。
  • TNF-α は、体外循環中、手術中および手術当日は血中濃度の上昇は示さず、術後 1日より上昇を認める。
  • 血液の異物接触により、カリクレイン系が賦活化され、ブラジキニンを遊離する。カリクレインは線溶系の亢進、白血球の遊走を促し、ブラジキニンは血管の透過性の亢進作用がある。
  • 血中カリウム濃度は尿中に排池されるため、尿量が多い場合には低下する。
  • 人工肺や回路などの異物との接触により、白血球数は増加する。
  • 人工肺や回路などの異物との接触により、白血球数全体に占めるリンパ球の割合は減少する。

 
血漿遊離ヘモグロビンの増加原因

  • 人工心肺など異物への血液の接触
  • 送血ポンプの圧閉度の調節不良
  • 細い送血カニューレの使用 →ジェット流が形成される
  • 送血ポンプの圧閉度の調節不良
  • 熱交換器における血液と温水との温度差の増大
  • 心腔内血液吸引回路からの多量の空気吸引
  • 使用血液の血液型不適合

 
カリウム濃度の変動

上昇に繋がる 低下に繋がる
□ 尿量低下
□ 心筋保護液投与
□ 輸血(濃厚赤血球)
□ 溶血
□   代謝性アルカローシス
□ カルシウム投与
□ インスリン投与
□ フロセミド投与
□ 希釈

 
 
【脳血流量】

  • 脳の血管抵抗を変化させる因子として、 PaCO2の低下は脳血管を収縮させ、逆にPaCO2 の増加は脳血管を弛緩させる。
  • 脳は血圧の変化に対して血流量を一定に保つメカニズム (autoregulation) があり、平均血圧が 60~ 150 mmHg では脳血流は一定に保たれる。

 
 
【血流分配】

  • 人体の血流量は酸素消費量に応じて血流分配を行っている。また、濯流量の変化に伴い、各臓器の血流の分配を変化させる。体外循環などの瀧流が低下した状態では、腎臓、筋肉、消化管等への血流を制限して、脳と心臓の血流を維持しようとする。

  
 
【全末梢血管抵抗(SVR)】

  • 全末梢血管抵抗 (systemic vascular resistance ; SVR) とは、血管内で起こる、血液の流れへの抵抗のことである。
  • 末梢血管抵抗、体血管抵抗ともいう。
  • 血管収縮や動脈硬化などによって血管抵抗は高まる。
  • 血圧は心拍出量と全末梢血管抵抗に比例するため、全末梢血管抵抗が増えると血圧が上がる。
  • 心拍出量を規定する因子は 4 つ(心拍数・心収縮力・前負荷・後負荷)である。
      • 後負荷は、全末梢血管抵抗・大動脈弁狭窄・血液粘調度・動脈の弾性・心室容積などで規定され、中でも全末梢血管抵抗は特に重要である。
  • 全末梢血管抵抗は、平均動脈圧 (MAP) 、中心静脈圧 (CVP) 、心拍出量 (CO) から計算する。
      • SVR = (MAP - CVP) / CO で求められる。

 
 
【抗凝固剤と中和剤】

  • ヘパリンは、血液中の抗凝固活性因子アンチトロンビンⅢを活性化させ抗凝固作用を得る。そのため、アンチトロンビンⅢ欠損症にヘパリンを投与しても抗凝固の作用は得ることができない。
  • へパリンの投与量は 200~300 U/Kg (2~3 mL/Kg) である。
  • へパリンで ACT を 350~400 秒以上に保つ。

 
硫酸プロタミンについて

  • プロタミンはヘパリン中和剤のため、人工心肺運転中には投与してはならない。
  • 体外循環終了後に血行動態の安定を見てからプロタミンの投与が行われる。
  • プロタミンはヘパリンの初期投与量の 1~1. 5倍を投与する。
  • プロタミン投与時に見られる血圧低下は血管拡張作用による。
  • プロタミン硫酸塩はへパリン1000単位に対し1.0~1.5mL を生理食塩液または 5%ブドウ糖液注射液 100~200 mL に希釈して10分以上時間をかけて投与する。
  • 急速投与により呼吸困難、血圧低下、徐脈等の症状が現れることがあるため、ゆっくりと投与する。

 
反跳性出血について

  • 血液透析、人工心肺による血液体外循環終了時にへパリンをプロタミンで中和する場合、反跳性の出血が現れることがある。

 
HIT(ヘパリン起因性血小板減少症

  • ヘパリン投与によって血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体に対する抗体(HIT抗体)が産生され、血小板減少と共に血栓塞栓症を引き起こす。
  • ヘパリン投与開始5~14日間で発症する。
  • 発症した場合はヘパリンは中止し、アルガトロバンを使用する。