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人工心肺

  【人工心肺回路】

 
【ポンプチューブ】
  • 人工心肺の抗血栓性、血液適合性、生体適合性を向上させる目的で人工心肺回路内面や血液ポンプ、人工肺、貯血槽など様々な材料にコーテイングすることが増えている。開放型回路など血液が空気と接触する場合はヘパリン量を減量できない。
  • ポンプチューブにはポリ塩化ビニルが用いられている。
  • 回路用チューブには透明な材質を用いる。
  • 血液適合性材料で構成する。
  • ローラポンプチューブは摩擦粉を生じない材質を用いる。
  • 回路接続用コネクタには一般的には疎水性のコネクタが用いられる。
  • 人工心肺用の血液回路にはJIS規定はない。 →透析用血液回路にはJISで規定されている。

 
 
【カニューレ類】

  • 充填血液量を少なくするためには小さな口径が有利である。
  • 拍動流ポンプでは大きな口径のカニューレが必要である。
  • 送血カニューレが細すぎると先端部でキャビテーションを生じる可能性がある。
  • 送血カニューレが太すぎると動脈壁を損傷する。
  • 血流に対して流路経を細くすると回路内圧は上昇する。

種類

  • 送血カニューレ
  • 脱血カニューレ
  • ベントカニューレ
  • 心筋保護液注入用カニューレ

 
 
【動脈フィルタ】

  • 体外循環中の合併症の 1 つとして、微小気泡や組織片、血液凝血塊による塞栓症が挙げられる。
  • 動脈フィルタは、体外循環時に発生する異物、組織片、血液凝集塊、微小気泡、材料の破片をトラップすることを目的としている。
  • 予防するためにエアトラップ(気泡捕捉)や 20~40μm のフィルタを送血回路に設ける。
  • フィルタ機能に加え、気泡の自動除去機能膜が付加されたものや白血球除去機能を有するものもある。
  • 最近は、人工肺に内蔵されたものも販売されている。
  • 動脈フィルタ内には、 40μm の疎水性メッシュが使用されている。
  • バブルトラップは気泡除去を目的としており、内部にフィルタを有していない。
  • 血液は上部から流入し、下部から流出する構造となっており、気泡等はベントポートより排気される。
  • 気泡は浮力によってフィルタ上部に集められ、ベントポートから排除することができる。
  • 入口圧をモニタすることでフィルタの目詰まりを早期に発見できる。

 
動脈フィルタに要求される基本的な特性

  • すべての異物(微小気泡、凝血など)が除去できること
  • 血流に対する抵抗ができるだけ低いこと
  • 血液成分に対する影響がないこと

 
 
【熱交換器】

  • 送血温は灌流水の温度と流量で調節する。
  • 体外循環中の血液温を変化させて体温を調節する装置
  • 体外循環中の血液の保温、低体温灌流法における血液の冷却・加温に必要である。
  • 冷水および温水を作成し熱交換器内に灌流する冷温水供給装置と接続してしようする。
  • 水温は45℃以上になると血漿たんぱくの変性をきたす可能性がある。  →42℃未満の温水を流す。
  • 送血温は39℃を超えないことが望ましい。
  • 復温時(加温)のときの血液(深部温) - 水(送血温)の温度差は、10℃以内でなければならない。
  • 現在、熱交換器は人工心肺と一体化されている。
  • 熱交換器はガス交換器より上流に設置する。
  • 熱交換器は人工心肺部より上部に設置
      • 血液を冷却するとガスの溶解度が高くなり復温の場合に血液内で気泡の発生を避けるため。

 
材質

  • 熱伝導のよいステンレス製、アルミ製
  • 生体適合性の面からポリウレタン、ポリエチレン

 
復温に要する時間に影響を与える因子

  • 熱交換器の性能
  • 患者の体温
  • 患者の体重
  • 送血流量
  • 送水温
  • ポンプ流量

 
 
【静脈貯血槽(リザーバー)】

  • 人工心肺装置の貯血槽は生体の循環血液量をコントロールする目的で使用される。貯血槽にはハードシェルタイプとソフトバッグタイプがあるが、主流としてハードシェルタイプが用いられる。
  • 成人の貯血槽、最大貯血量は 3000~4000 mL である 。
  • 貯血槽の液面低下を検知するため、レベルセンサ設置が義務付けされている 。
  • リザーバは、カーデイトミーリザーバと静脈貯血槽から構成され、現在ではほとんどが一体型になっている。
  • カーディオトミーリザーバには 20~40μm の細孔を持つフィルタが内蔵されており、静脈貯血槽には除泡網が内蔵されている。
  • 貯血槽には液面センサを取り付ける(バブルセンサは送血回路に取り付ける)。
  • 脱血された血液、吸引した血液に混ざった気泡を取り除くために除泡網を内蔵している。除泡網は、発泡ウレタンスポンジをシリコーンオイルでコーティングされている 。
  • 膜型人工肺は熱交換器が肺と一体型になっているタイプが多く、貯血槽に熱交換器は内蔵されていない。
  • 貯血槽には薬液を注入するポートがある。
  • 貯血槽の底面から送血ポンプに血液が送られるため、貯血槽の血液の液面の高さが低くなると、空気を引き込んでしまう。

 
ソフトリザーバについて

  • ソフトリザーバは、ビニールなどの柔らかい素材でできており、貯血量に従って容積を変える。貯血レベルが低下しても気泡が混入しない特徴がある。
  • ソフトバッグのリザーバは空になってもシートが密着するだけなので空気を送る危険性が少ない。

 
ハードシェル型について

  • ハードシェルタイプは素材にポリカーボネートが使用され貯血量も確認しやすいように工夫がなされている。
  • ハードシェルタイプには 20~40μm のフィルタと除泡網が内蔵されている。
  • 陰圧吸引補助脱血を施行する際は貯血槽内を陰圧に保つ必要があるため、ハードシェルタイプが用いられる。

 
カーディオトミリザーバー

  • 素材は透明なものが用いられる。
  • 心内貯血槽のフィルタ細孔は約20μm程度である。
  • レベルセンサーを装着する。

 
 
【吸引回路、ベント回路】 

  • 落差脱血はサイフォンの原理によって行われる。
  • 落差脱血では、ある程度の太さのカニューレを使用しないと十分な脱血が行えない。
  • ベント回路には逆流防止弁が必要である。
  • 陰圧吸引補助脱血ではリザーバに陽圧防止弁を装着する。
  • 血槽内が陽圧になると、吸引脱血では脱血停止を起こす危険がある。
  • 送脱血が安定している状態で吸引回収量が多い場合は貯血量が過剰になるため、へマトクリット値次第では血液濃縮を行う場合がある。
  • 心臓内に血液が溜まることにより過伸展が生じるので、ベント用ポンプの回転数は上げなければならない。
  • ベントチューブは、心臓の過伸展を防止するために肺動脈、左房を介して左室に挿入される。
  • ベントポンプを開始すると心臓が虚脱する。離脱時は、心臓内および生体側へ血液を戻すため、ベントポンプを停止させる。

 
ベント回路

  • ローラポンプを用いることで気泡を含む血液の吸引が可能であり、吸引量も把握できる。
  • ベント回路の吸引には次の方法が用いられる。
      • ローラポンプを用いる方法
      • 落差圧でサイフォンの原理による排液
  • 左室ベントは右上肺静脈からカニューレを挿入し、僧帽弁を経由してカニューレ先端が左室に挿入される。

 
 
【ヘモコンセントレーター(血液濃縮器)】

  • 人工心肺中の血液希釈や心筋保護液などによる、高度希釈状態を自尿のみで回避困難な場合、輸血合併症を回避するため、限外濾過により余剰水分を除去する血液濃縮が行われる。
  • 透析器と同様な構造になっており、血液が中空糸内部を灌流し、水分は中空糸外部に排出される。
  • 内部灌流型である。
  • 限外濾過にて余剰水分を排出するため、透析液は必要ない。
  • 親水性の多孔質中空糸膜を用いる。
  • 内部灌流型では圧力損失が高くなるため、メインの送脱血回路内に並列に組み込む。
  • 排出される水分の電解質濃度は、血漿中の電解質濃度と等しい(細胞外液型)。
  • 血液濃縮器は、除水などをして血液を戻すため、体外循環のメイン回路と並列に接続する。
  • DUF(dilutional ultrafiltration)は体外循環中に補液を行い、灌流血液を希釈しながら水分などを除去する方法である。
  • 中空糸の内側を血液が通る内部灌流型である。
  • ポリエーテルスルフォンなどの材質でできた中空糸を用いている。
  • 原理は限外濾過であり、中空糸内の灌流圧や外側の陰圧を原動力とする。
  • 濾過液には水分とともに、分子量の小さな電解質も含まれている。
  • 出口のヘマトクリット値が 50% になるまでの濃縮はできない。セルセーパーでは約 50% の赤血球生理食塩浮遊液となる。

 
 
【冠灌流回路】
OFF-Pump Coronary Bypass(OPCAB

  • 人工心肺を用いずに心拍動下に簡単な補助用具を用いて冠動脈バイパスを行う方法
  • 利点として、低侵襲性、術後の早期回復、入院日数の短縮など
  • 必要なもの
      • 血液回路装置 : 術中の出血を回収
      • CO2ブロア : CO2を吹きかけることによって血液を排除し、吻合部視野を広げ、吻合を容易にする装置
      • スタビライザ : 心臓表面に吸着させることで、心臓の動きをその部分だけ制限し、血管吻合をやりやすくする器具
      • 除細動器、ペースメーカー : 術中における不整脈や心停止への対応として必要
      • 人工心肺装置、PCPS : 突然の心停止に備えて準備しておく
  • OPCABでは、心停止を行わないので、心筋冷却水による心筋保護は行わない。

 
 
【組み合わせ】

  • 動脈血フィルタ ・・・ 微小気泡の除去
  • 血液吸引回路 ・・・ 術野内の出血回収
  • 血液濃縮器 ・・・ 余剰水分の排出
  • ベント回路 ・・・ 左心室の過伸展防止
  • 冠灌流回路 ・・・ 心停止と心筋保護を目的に冠灌流を行う
  • レベルセンサ ・・・ 貯血槽
  • 気泡検出器 ・・・ 送血回路
  • 陽圧開放弁 ・・・ カーディオトミーリザーバ
  • 酸素飽和度モニタ ・・・ 脱血回路に設置
  • 逆流防止弁 ・・・ 空気誤送防止
  • ポンプチューブ ・・・ ローラポンプによる送血
  • 貯血槽 ・・・ 循環血液量の調節