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人工心肺管理

【人工心肺離脱時の操作】

  • 離脱操作で重要な指標は静脈圧である。
  • 静脈圧は5~8mmHgとなるまで生体側へ血液を入れ込み、脈圧が十分に出現した時点で送脱血流量をバランスよく減じながら離脱する。
  • 動脈圧を指標にした場合、心機能未回復症例では静脈圧は異常に高くなり(心不全)、心電図の徐脈化、静脈血酸素飽和度の低下から低血圧となるため、人工心肺離脱後早期再灌流を行うことになる。
  • 人工心肺離脱時であっても部分体外循環であった場合、人工呼吸器を作動させておく必要がある。
  • 硫酸プロタミンの使用は、人工心肺離脱後に行う。

 
 
【体外循環で利用される薬剤】

  • ヘパリン : 抗凝固作用
  • 硫酸プロタミン : ヘパリンの中和
  • マンニトール : 利尿、細胞浮腫の予防
  • フロセミド : 利尿薬
  • アプロチン : 血小板の保護
  • 重炭酸ナトリウム : 代謝性アシドーシスの改善
  • 乳酸加リンゲル : 最終的な充填量の調整を含めて血液希釈率の目安
  • ハプトグロブリン製剤 : 溶血により生じた遊離ヘモグロビンを捕捉し、腎不全を予防する
  • リドカイン硫酸塩 : 体外循環中に使用する抗不整脈薬
  • 代用血漿 : 浮腫の軽減
  • 塩化カルシウム : 心収縮力の増強、昇圧作用

 
 
【慢性腎不全による維持透析患者における人工心肺管理】
l  体外循環中の尿量は、腎血流量を反映するだけでなく、その他の臓器血流の指標となるため、尿量が維持されていれば全身の臓器灌流が維持されていることを表している。
l  体外循環中の腎機能は、糸球体機能と尿細管機能の両方が傷害されるのが特徴であり、灌流圧の低下による血流再分配が起こり、灌流圧の低下が加わると糸球体障害が出現し、急性腎不全を発症する。
l  術前より腎不全や腎機能低下を認める場合は、体外循環中に血液透析療法を施行する。
l  透析導入前の重症腎不全症例では、残存腎機能の温存を図る(腎血流保持目的のため灌流量・灌流圧は高めに維持する)。
 
透析症例

  • 血液透析あるいは大量限外濾過を併用する。
  • 血液充填(高度貧血症例)
  • 輸血(離脱後Ht30~35%)
      • 自尿がないので不必要な輸夜や輸血は考慮する。通常の体外循環に比べて無輸血管理は難しい。
  • 高カリウムは不整脈の原因となるため、補正が必要である。
  • 末梢血管抵抗の高い症例が多く、灌流圧は高めとなる。
  • 透析患者において利尿薬はその効果が期待できない。
  • 透析の血流量は人工心肺の送血量(適正灌流量)と比べて少ないので、灌流量を増やす必要はない。

  
 
【乳幼児における人工心肺管理】

  • 乳児・新生児は成人とは生理的にも解剖学的にも異なる。
  • 乳児・新生児の主な特徴
      • 基礎代謝量 : 体表面積あたりの酸素消費量が大きく、体重10kg の乳幼児では成人の約 2倍以上。
      • 体外循環流量:体表面積あたりの体外循環流量は成人に比べて多くなければならない。
        • 成人 2.0~2.5 L/min/m2
        • 小児 2.4~2.6 L/min/m2
        • 乳幼児 2.8~3.2 L/min/m2
  • 循環血液量:体重あたり約 80 ml/k g。乳児の循環血液量の充填量に対する割合が成人に比べて小さい。
  • 細胞外被量:細胞外液量の割合が成人に比べて大きい。
  • 解剖:先天性心疾患をはじめ複雑心奇形が多い。

 
具体例

  • チアノーゼ性心疾患は、体循環から肺循環への側副血行路が多く、体外循環中の灌流圧が低くなることがあるの で、側副血行路を流れる分の血流量を加えた灌流量を設定することが必要である。
  • 体表面積あたりの灌流量は成人よりも多くなければならない。
  • 遠心ポンプは成人では関心術にも広く用いられるが、小児では低流量の安定に欠けることもあり、開心術ではあまり用いられない。補助循環では用いることが多い。
  • 新生児や小児では希釈率が大きくなりすぎることが問題である。無輸血充填(希釈限界)においてもHbが維持 できるか、体外循環中で、は限外諸過によるHbの維持、手術操作上の品暗から低流量にするために低体温こする ことも考慮するなどが必要である。
  • 新生児・乳幼児は成人に比べ、動脈は柔軟性に富んでいるので、灌流量を増やしても動脈圧 は高くはならない。ただし動脈圧を上げる場合は血管収縮剤の投与などを考慮する。