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ECMO

 【概要】

  • 重症呼吸不全に対して膜型肺を用いた体外循環により一時的に呼吸補助を行い、酸素化機能障害に陥った生体肺機能が回復するまでの方補助手段。
  • PCPSと同じシステムを用いるが、呼吸補助を主体とするためにECMOと称する。
  • 純粋な呼吸不全に対する膜型肺を用いた呼吸補助を体外式肺補助(extracorporeal lung assist ; ECLA)あるいは、ECLS(extracorporeal life support)といった用語も用いられている。
  • 膜型人工肺を含んだ体外循環装置を使用し、人工呼吸管理では対処できない重症呼吸不全が適応となる。
  • V-A bypassでは右心房脱血、大腿動脈送血となるため、バイパス量が多い。すなわち送血量が多いと逆行性送血のため心仕事量の増大となる恐れがある。
  • ECMO管理中であっても人工呼吸器は必要である。一般的には人工呼吸器より体外循環補助装置のウィーニングを先に行う。
      • 血液中のガスは維持できるが、人工呼吸器を使用しないと、肺胞が虚脱してします。そのためPEEPをかけたモードで人工呼吸換気をする必要がある。
  • 体外循環補助装置のため、血液を駆動するポンプが必要である。一般的には遠心ポンプが用いられる。
  • ECMO管理中は常温で行う。体温をは30℃以下に下げると心室細動などの致死的不整脈を誘発する恐れがある。
  • ECMO管理中のACTは180~200秒程度が適切とされている。

 
 
【V-V ECMO】

  • V-V ECMO は静脈からの脱血・送血のため、体循環は自己の心臓からの拍出量によって決まる。
  • V-V ECMO は静脈と静脈のバイパスである。
  • V-V ECMO は脱血・送血を静脈から行うため、左室の後負荷は増加しない。V-A ECMO の場合では、送血が体循環と逆行性になるため左室の後負荷が増加する。
  • 静脈から脱血して酸素加を行い、静脈へ送血するため呼吸機能の酸素化を補助する。
  • 小児でも肺高血圧症などの場合に、呼吸補助として用いる。
  • V-V ECMO は呼吸補助を目的とした心肺補助法で、下大静脈から脱血して上大静脈へ送血することにより、酸素加され血液を静脈に返すことで肺機能を補助する。
  • V-V ECMO は酸素加された血液が静脈に返血されるため、酸素化さていない静脈血と混合されてしまうため VAECMO に比べると酸素化効率が悪くなる。
  • V-V ECMOは静脈から脱血し、人工肺で酸素加した血液を静脈へ送るため再循環が生じる。

 
V-V ECMO開始の呼吸条件

  • V-V ECMOの開始の基準として紹介されているものは以下のとおり。
  • 低酸素性の呼吸不全
      • 重篤な低酸素血症を人工呼吸器だけでは解決できなかった場合
      • 100%酸素投与にもかかわらず、SaO2が90%以下の場合が2時間以上続く時
      • シャント率がFiO2 1.0で30%を越える場合
      • 静肺コンプライアンス  < 0.5 ml/cmH2O/Kg
      • PEEPを増加しても、肺胞の再開が得られない場合(PEEPを5cmH2Oから15cmH2Oに増加しても、酸素化の改善がない場合)
  • 高二酸化炭素性の呼吸不全
  • 気道内圧を45cmH2O以上にしても、pH 7.0以下にしかならない場合

 
V-V ECMO不適応の疾患

  • 以下のような患者ではV-V ECMOの適応から除外されている。
      • 悪性腫瘍の患者
      • 基礎に慢性呼吸不全がある場合
      • 重度の多臓器不全
      • 治療に反応のない敗血症性ショック患者
      • コントロール不能な代謝性アシドーシス
      • 中枢神経系の損傷が激しい場合

 
 
【V-A ECMO】

  • VA ECMOはPCPSと同様に静脈脱血、動脈送血であるため左室の後負荷が増える。
  • 遠心ポンプを用いた VA-ECMO、いわゆる PCPS は図のような構成となっている。
      • 基本は閉鎖回路で実施され、気泡が混入しにくい構造となっている。
      • 血液ポンプ入口部分(右心房から脱血回路を含む遠心ポンプまで)が陰圧となり、回路内血液の採血などで大気に解放された場合に、空気を引き込んでしまう。
      • 回路の折れ曲がりなどで閉塞した場合、陰圧によりキャピテーションが生じるため注意が必要となる。

 
 
【PCPSのほうが好ましい場合】

  • 心機能に異常がないことが保証されなくては、V-V ECMOは使用されるべきではない。この場合、V-A バイパス(PCPS)をまず行い、その後必要があればV-V ECMOに変更することも出来る。
  • 以下のようなケースではV-V ECMOではなく、動脈に返血するPCPSが勧められている。
  • 心拍出量が心係数で3.0以下の場合
  • 平均肺動脈圧が45mmHg以上の肺高血圧がある患者
    • 心肺停止後の患者