【血液ポンプ】
分類 | 駆動方式 | 形状 | 用途 |
容積型 | 管圧迫型 | ローラポンプ型 | 体外循環 |
往復動型 | ダイアフラム型 サック型 |
体外式補助人工心臓 | |
運動(ターボ)型 | 遠心型 | コーン型 羽根車型 直線流路型 |
体外循環 植込み型補助人工心臓 |
軸流型 | 植込み型補助人工心臓 |
血液ポンプに要求されるポイント
- 500mmHgの負荷に対して7L/minの流量を維持できること。
- 血液損傷が軽度であること。
- 血液の滞留・乱流の原因となるような死腔がないこと。
- Disposableで、かつ安価であること。
- 送血流量の信頼性・再現性が高いこと。
- 停電の場合には手動でも流量を確保できること。
容積型の血液ポンプ:自然心臓同様に血液を吸い込んで駆出するポンプ
- サック型ポンプ(補助人工心臓):拍動流ポンプ
- ダイアフラム型ポンプ(補助人工心臓):拍動流ポンプ
- ローラポンプ:無拍動流ポンプ
- チューブ型ポンプ(補助人工心臓):拍動流ポンプ
- プッシャプレート型ポンプ(補助人工心臓):拍動流ポンプ
【 ローラポンプ】
- ローラポンプは回転数を変動させることにより拍動流ポンプとして使用できる。
- ローラポンプでは負荷に影響されずに一定の流量を維持することが可能である。
- ローラーポンプは血液流量が回転数とチューブ内径によく比例するため、流量制御が容易である。
- 血液損傷は遠心ポンプより強く、また回路閉塞時には過度の圧力によって回路破裂の危険がある。
- ローラーポンプは圧閉度が適正でないと、血液の逆流や血液損傷をきたすため、圧閉度を調整する必要がある。
- ローラーポンプは空気の吸引・吐出もできるため、吸引ポンプとしても使用できるが、空気を誤送する危険がある。
- ローラーポンプは停止したときに 2 つのローラーのいずれかが流れを止めて逆流を防ぐ。
- ローラポンプは半円形のポンプヘッド内面にセットした弾性管を回転するローラによりしごいて流量を生み出すため、弾性管とローラ部の圧閉度調節(オクリュージョン調節)が必要。
- 圧閉度を適切にすると構造上、停止時に逆流は生じないが回路閉塞時には過度の陽圧により回路破裂の危険がある。
- ローラポンプの流量は回転数とポンプ直径とチューブ断面積が分かれば算出できる。
- ローラポンプでは駆出される血液量は回転数に正比例するが、遠心ポンプでは後負荷の変動によって流量が変化するため回転数に比例しない。
- ローラポンプはチューブをしごくことで強制的に送血するため、低流量の制御がしやすい。遠心ポンプの場合は後負荷の影響を受けるため低流量域での制御が難しい。
【遠心ポンプ】
- 遠心ポンプはポンプヘッド内のインペラ(羽根車)を高速で、回転させることで血液に遠心力を与え流量を生み出す。
- 回転体は、コーン型、インペラ型、直線流路型があり、いずれも単回使用である。
- 人工心肺用の遠心ポンプは、モータと回転体を磁気結合させて駆動する。
- 遠心ポンプは、回転体を回すことで圧力を発生させることで液体を送り出している。
- 遠心ポンプ上部(中心部)より血液が流入して、中の羽根車の回転により出口方向(半径方向)に流れる。
- ローラポンプよりも血球損傷は抑えられるが構造上逆流を生じたり、ポンプ前後の負荷によって流量が変化する欠点を持つ。
- 遠心ポンプは末梢血管抵抗の変動によって流量が変化する。従って、流量を一定に保つには流量を監視し回転数を制御する必要がある。
- 遠心ポンプによる血液損傷はローラポンプよりも軽度である。
- 吸引回路には多量の空気が混入する。遠心ポンプは、多量の空気がポンプ内に一度に混入すると、回転していてもポンプの吐出が停止する (de-prime 現象) ため、ポンプとしての機能を果たすことができない。
- しかし、断続的に少量の気泡が流入した場合には空気が砕かれマイクロパブル化して流出する。過主国家試験において、第 21 回以前は、遠心ポンプは「空気を体内に送り込む危険性が少なし、」が正答肢であった。第 27 回以降は、遠心ポンプは「気泡が混入しても体に送り込まれることはない」が誤答肢となっており、注意する必要がある。
- 駆出される血液量は血液の粘度の影響をうける。
- 遠心ポンプは後負荷の増大により流量は低下する。
- 遠心ポンプは流量計が必要であり、電磁式と超音波ドプラ式のものがある。
- 遠心ポンプは回路閉塞時に回路破裂の危険が少ないが閉塞時、瞬間的に回路内圧が上昇する。
- 同じ回転数であっても、流量ゼロの時が最も発生圧力が高く、流量が増加するにつれて発生圧力は右下がりとなる。また、同じ回転数であっても、ポンプ前後の負荷特性により流量が変化し、回転数から流量を計算することができないため、血流計が必要となる。
- 予めポンプを回転させてから送血側の鉗子を外す。
【ローラポンプと遠心ポンプの比較】
ローラポンプ | 遠心ポンプ |
□ 回転数と流量の関係は一定である。 □ 回転数から流量を推定できる。 □ コスト面に優れている。 □ 術野の吸引ベントや回路に用いることができる。 □ 後負荷の影響を受けにくい。 □ オクルージョン調整が必要である。 □ 大量の空気を送り込む危険性がある。 □ 吸引ポンプとして使用できる。 |
□ 危険な高圧が生じない。 □ 過度の陰圧を生じない。 □ 流量計が必要である。 □ 後負荷により流量が変化する。 □ 逆流の危険性がある。 |
【拍動流ポンプ】
拍動流専用ポンプ
- 流路抵抗が増加し回路やカニューレを太くしなければならない、一方向弁を入口、出口に必要とするなど、装置が複雑かつ高価になる割に拍動流であることにメリットが小さいことなどの理由により現在ではほとんど使用されていない。
- 補助人工心臓に使用されることがある。
無拍動流ポンプの拍動流モード駆動
- ローラポンプや遠心ポンプにおいて、高回転、低回転(停止)を繰り返すことにより拍動流を得るものである。
- 送血回路内では100~200mmHgの脈圧が容易に得られる。
- ローラポンプ使用の場合は、一方弁は必要としない。
大動脈内バルーンパンピング(IABP)
- 体外で作成した拍動流ではダンピングが問題となることから、大動脈内バルーンパンピング(IABP)を用いて体内で拍動流を作成する。
- 送血カニューレによるダンピングがないことから、60~100mmHgの脈圧を確実に得ることができる。