【空気誤送・空気塞栓】
- 空気塞栓の原因となるのは
- 静脈脱血の急激な減少による、貯血槽血液レベルの低下
- Air Block
- 脱血管の屈曲
- 術野での突然の大量出血
- 脱血回路からの多量空気流入
- 陰圧補助脱血の吸引ラインの閉塞
- 密閉されたリザーバー内が、吸引ポンプ、ベントポンプの回転により陽圧となり、脱血回路からの空気が逆流することがある。
- 送血ポンプ流入部の亀裂
- 流入部は陰圧がかかるので、そこに亀裂があると、空気流入の原因となる。
- 左心ベント挿入部からの空気吸引
- 左心ベントポンプの逆回転
- 回路には安全弁として、一方弁をつけることが望ましい。
- リザーバー内圧の上昇によるベント回路への逆流
- カーディオトミーリザーバの陽圧
- ローラポンプチューブの破損
- いずれの場合も直ちに送血量を減少あるいは送血を停止し、原因を突き止めて対処しなければならない。
体外循環用血液回路内に気泡を生じる原因
- 過度の陰圧
- 血液温の急上昇
- 酸素ガスの過剰
対処法
- 直ちに人工心肺の送血を停止する
- 頭部を低位とするトレンデレンブルグ体位をとる。
- 次に、上行大動脈に挿入した送血カニューレを抜去する。人工心肺回路のバイパス回路を用いて上大静脈側から低温にて逆行性に上大静脈送血を行う。これにより、脳動脈内の空気が送血カニューレを抜去した上行大動脈の穴から空気が外に押し出されてくる。
- この際、送血温は20℃程度、流量1~2L、上大静脈圧は25mmHg以上に上げないように注意する。
※空気塞栓の防止策
- 動脈フィルタを使用する。
- 貯血槽レベルセンサーを使用する
- 貯血槽に陽圧防止弁を取り付ける。
- 気泡センサを使用する
- ベント挿入時、自己心拍があるとき、適切な容量負荷が必要
- ベント吸引テストが必要
- ベントチューブへの逆流防止弁を取り付ける。
- 心筋保護液の残量を確認する。
※リザーバ内液面低下の対処について
- 循環血液量の減少を乳酸リンゲル液で補う。
- リザーバーの位置を低くする →落差を増やし、脱血量を増加する。
- 術野の出血を回収する。
【人工肺の交換】
- 次の場合には人工肺の交換が必要である。
- 酸素加能の低下
- 除泡能の低下
- 膜型肺における血液の漏出(血漿漏出)
- 熱交換器からの水漏れ
- 血栓形成
- 酸素回路の破れ
- 人工肺入口の上昇
※Wet lung
- 人工心肺を長時間運転すると生じる。送気ガスに含まれる水分による結露が膜表面を覆うため、酸素加低下の原因となる。
- その際は酸素をフラッシュすることで酸素加能が回復する。
※人工肺の酸素化機能低下の対処法
- 人工肺のガス交換能が低下した場合、人工心肺の運転を停止することなく交換するか、体温が低下していた場合、極めて短時間の運転停止下にて人工肺を交換する。
- 人工肺の交換
- 酸素流量を増やし膜に付いた結露を除去する
- 灌流量を増やす
- 酸素濃度を上げる
※人工肺の交換を考慮する必要なし
- 人工肺への空気の送り込み
- 送血フィルタの破損
- 冷温水槽からの水漏れ
※人工肺出口圧(動脈フィルタ入り口圧)の上昇の原因
- 大動脈の偽腔内送血
- 送血カニューレの先当たり
- 送血回路の屈曲
- 動脈フィルタの目詰まり
【送血ポンプ】
- 停電などでポンプが回らなくなった場合には、手動ハンドルを用いて循環を維持する。
- 日ごろから手動ポンプの回転の方法を十分習得しておく必要がある。
【熱交換器からの水漏れ】
- 熱交換機は人工肺と一体化しているものが多く、熱交換器単独の交換はできない。
- 熱交換器から水が漏れている場合、血液側への汚染はないと考え、熱交換水を補給しつつ人工心肺の運転を継続する。
- 血液層が破損している場合は、熱交換水が赤く変色する。その場合、交換するかそのまま継続するかを医師と協議する必要がある。
- 溶血と感染の対策が必要である。
【回路チューブの脱落】
- 各回路チューブの接続は、十分な圧に酎え得るよう強固にしておくことが必要である。思わぬ圧の増加、生体との接続部である脱血カニューレ、送血カニューレが外れることがある。
- 脱落として考えられる
- 人工肺流出部
- 人工肺流入部
- 送血カニューレ接続部
- 回路の脱落の場合には、起こり得る空気塞栓、 循環回路からの失血を防ぐことが必要である。
- 原則として
- 脱血側が外れた場合には、脱血側の回路を閉鎖して直ちにポンプを停止。
- 送血側が外れた場合には、ポンプを直ちに停止して脱血側回路の閉鎖を行う。その後に回路を修復し空気塞栓を起こさないよう注意しながら体外循環を再開する。
- 対処法
- 脱血管挿入部の確認をする
- 送血ポンプを停止する。
【血液のトラブル】
- 人工心肺中に起こり得る血液のトラブルとしては、 血栓形成による人工肺の機能低下および血球・血漿たんぱく損傷による凝固能異常・溶血である。
- 血栓形成を防ぐには、 ACTが確実に480秒以上になっていることを確認する必要がある。定期的にACTの測定を行い、短縮の傾向があれば直ちにヘパリンの追加を行う。
- 溶血が顕著な場合にはポンプチューブの圧閉度を調整する。
- 代謝性アルカローシス時には灌流量を増やして平衡を保つ。
【灌流中の溶血の原因】
- 人工心肺回路内の機械的損傷
- 過度の吸引(吸引回路のローラーの回転数が多い)
- ローラポンプのオクリュージョン調節不良(過度圧閉や不完全圧閉)
- 過度な加温
- 細すぎる送血カニューレ
- 送血カニューレ部でのジェット形成
- 細すぎる脱血カニューレ
- 陰圧吸引脱補助法では、細い脱血カニューレに過度の陰圧が発生して溶血を生じる。(第26回午前74)
- 使用血液の不適合
- 寒冷凝集反応
- 寒冷凝集反応陽性の患者の場合、体温冷却に伴い、血液の凝集反応、溶血反応がある。
対策
- ポンプの適切な圧閉度(ジャストオクリュージョン)調整
- 吸引ポンプの回転を出血量に従って調節
- 送血カニューレは灌流量に応じた十分に太いものを用いる
- 血液温と加温水の温度差が10℃以上にしない
- 最高加温水の温度が42℃を超えないよう細心の注意を払う必要がある。
【脱血不良】
- 直ちに執刀医に報告して原因を追究する。
- 脱血カニューレの挿入部位のチェック
- 血液回路の折れ曲がりがないかをチェック
- 循環血液量の絶対量を把握する。
- 鉗子の閉鎖の有無の確認
- 落差不足になると脱血不良
- 総血流量を減らしながら補充液を急速充填する。
- 中心静脈圧の確認をする。
【その他】
- 開始時の急速な脱血により血圧低下を引き起こす。血液の急速な希釈によるカテコラミン濃度の低下などが原因である。
- 大動脈解離を認めたら送血流量を下げる。
- 人工肺ガス流出口に水滴が認められたら酸素フラッシュを行う。
- 人工心肺の目詰まりを検知するためには人工心肺入り口圧の測定が必要である。
- 回路内圧の上昇は血栓形成、送血回路の折れ曲がりなどがあるので、直ちに交換するのではなく、原因を調べる必要がある。
- 心臓に過伸展があれば、心臓に血液が溜まっていることがあるので、ベント用ポンプの回転数は上げなければならない。
- 送血ポンプ故障時は手動式ハンドルを用いて循環を維持する。
- 停電に備えて非常電源を用意する。
- 酸素配管の供給停止に備えて予備の酸素ボンベを準備しておく。