【体表面温度計】
予測電子体温計
- 電子体温計のセンサとして、サーミスタが頻用される。
- 一般に電子体温計ではサーミスタにより温度情報を電流値の変化に変換している。
- 電流は電圧に変換され、増幅器で増幅されたのちAD変換器によりデジタル信号に変換される。デジタル信号はCPUによって演算処理され温度に換算されたのち、表示部に表示される。
- 腋窩からの発汗が多い場合は、誤差が大きくなりやすい。
- 実測式体温計は、体温計自体に伝わる熱を忠実に表示するタイプの検温器である。
- 体温を正しく測定するためにかかる時間のことを「検温時間」といい、実測式体温計の検温時間は、体温を測定する部位によって異なる。
- 測定時間は口腔・直腸なら5分以上、腋窩なら10分以上必要とする。
- 予測式電子体温計は、実測式で5~10分程要していた測定時間を短縮するために開発された機能である。
- 予測式には、実測データの統計的な分析で最高温度を予測する方法や2つのサーミスタによる熱の伝搬速度から予測する手法がある。
- JIS T 1140において、一般用実測値の最大許容誤差(温度範囲30~43℃) は±0.1℃とされている。
サーミスタ
- サーミスタは、半導体の一種で温度変化に応じて抵抗が変化する。
- 口腔温は一般的に舌下中央部にセンサ(サーミスタ) を留置した状態で口を閉じて、放熱を防いだ状態で計測する。
- 電子体温計に使用されるサーミスタは酸化物半導体であるNTC型が利用される。
- NTC型サーミスタでは、温度上昇に伴ってキャリアが増加することで抵抗値が減少する。
- サーミスタは温度変化に応じて電気抵抗が変化する。抵抗値が減少するものをNTCサーミスタといい、上昇するものをPTCサーミスタという。
ダイオード
- 温度上昇で抵抗が減少することを利用している。
熱電対体温計
- 物体内部の温度勾配によって電圧差が生じる現象をゼーベック効果といい、この電圧差は物体の材料によって異なる。
- 熱電対では異なる金属の2接点間に温度差を設け、その温度差によって生じる熱起電力から温度を計測する。
- 熱起電力を発生させる目的で2種類の導体の一端を電気的に接続したもの。
- 熱電対の一方を基準点(基準接点)、他方を測定点(測温接点)として温度差を与える。
サーモグラフィ
- サーモグラフィは、体表からの赤外線放射分布を画像化している。
- 人体から放射される遠赤外線(波長8~13μm) の検出素子として、量子型検出器が多く使用されている。
- ステファン・ボルツマンの法則を利用している。
- 黒体(blackbody) とは、入射した電磁波(可視光を含む)のすべてを完全に吸収する物体をいう。
- 黒体は内部の熱を効率よく放射できる性質を持ち、放射率は1になる。
- サーモグラフィは熱の放射を利用した非接触式体温計であり、生体表面から放射される赤外光領域の電磁波を検出している。
- 生体から放射される赤外線のエネルギーは絶対温度の4乗に比例している。
- 生体表面からセンサまでの伝搬中に水蒸気や炭酸ガスなどによる吸収散乱が生じるため、接触型の温度計に比べて温度の精度と分解能が低い。
- 市販されているサーモグラフィでは、サーモパイルなどの赤外線センサやボロメータなどを利用している。
- 温度分解能は一般的には0.1℃程度である。高性能なものでは0.01℃程度の分解能を有する。
- 皮下1mm以下の深さにある温度情報が検出できるとされている。
- 血行障害、代謝異常、慢性疼痛、自律神経障害、炎症、腫瘍、体温異常など、広範な診断に利用されている。
- 生体から放射される赤外線は非常に微弱なため、HgCdTeを用いた応答の優れた高感度の検出器が採用されている。
- 赤外線検出器には、赤外線の光量子の影響を電気的に検出する量子型と、検出素子の温度変化で生じる物理現象を利用する熱型がある。
- 医療用サーモグラフの赤外線検出器には、量子型が使用されることが多い。
- 医療用サーモグラフの最小検知温度差は0.1℃程度で十分とされる。
- 最小検知温度差はサーモグラフの感度を表す指標であり、装置が検出できる最小の温度差をいう。
- 周囲温度は、サーモグラフの測定に影響を及ぼす因子の1つである。半裸での測定の場合は26±1℃、全裸での測定の場合は29℃以上の温度を維持することが望ましい。
耳用赤外線体温計
- 鼓膜温は赤外線センサを外耳道に挿入し、鼓膜とは非接触で計測する。
- 耳用赤外線体温計には、熱型検出器(サーモパイル)が使用されている。
- 耳式赤外線体温計は鼓膜からの熱放射を利用して計測する。
- 耳用赤外線体温計は測定時間の短縮のため、温度上昇曲線をデータとして記憶させ、初期の温度上昇の傾向から最高温度を予測する。
- 耳式体温計は鼓膜からの赤外線を検出して体温を計測するものであり、鼓膜温は核心(中枢)温に近いとされる。
- 生体からは10μm付近の遠赤外線が放射されている。
- 外耳道に炎症があった場合、鼓膜からの赤外線を正確に検出することができず、測定結果に影響が生じる。
【深部体温計測】
深部体温計
- 熱中症や低体温で中枢温を計測したい場合には深部体温計を利用する。
- 深部体温計測では、感温部を皮膚に貼付し、測温部の温度上昇が停止するまで断熱材をヒータで加温することで皮膚と深層部の温度差を無くし、深部体温が測温できる(熱流補償法による測定) 。
- 皮膚をヒータと断熱材で覆うことで皮膚上から中枢温が計測できる。
- ヒータで加温はするが常に42~43℃にすることはない。
- 中枢温が周囲温度より低い場合には熱の放散が生じない。
- 深部体温計の感温部は、断熱材、体温測定用サーミス夕、ヒー夕、ヒータ加温制御用サーミスタなどで構成される。
- 直腸温は腸内細菌の代謝熱の影響で、他の計測部位より高値を示す。
熱流補償法
- 深部体温計は、熱流補償法を利用している。
- 熱流補償法とは、通常、体表面は外気温の影響を受け、深部の温度より低くなる。しかし、体表面を断熱材で、覆って外気温の影響を防ぐと、体表面は深部と等しい温度になる。
- このとき、皮膚表面の温度は深部温と等しくなっている。
- この原理を利用し、ヒータと電子回路を用いて皮膚から外気中に放散する熱を遮断することにより、深部温の測定が可能になる。
サーモパイル
- サーモパイルは、多数の熱電対を直列につないだ熱型赤外線センサでサーモグラフィなどに用いられる。
- サーモパイルは冷却が不要な熱型検出器である。
【測定原理と計測機器 まとめ】
測定原理 | 計測機器 |
ゼーベック効果 | 熱電対温度計 |
熱流補償法 | 深部体温計 |
サーモパイル(集電効果) | 鼓膜温度計 |
赤外線放射エネルギー ステファン・ボルツマン法則 |
サーモグラフ →光導電型センサ |
サーミスタ(温度-抵抗変化) | 電子体温計 |