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安全管理

【人工呼吸器のトラブル対策】
気道内圧上限警報(高圧警報)

  • 警報が発生すると吸気ガスの送気を中止して呼気へと変わる →換気量の減少
  • 初期設定は40~50cmH2O

 
<高圧アラーム原因>

  • l呼吸回路の狭窄、屈曲、閉塞、ねじれなど
  • 挿管チューブの屈曲などによる閉塞
  • 挿管チューブや気道内の分泌物貯留による閉塞
  • 挿管チューブ先端開口部が気管壁により閉塞している
  • 患者の肺容量に対して換気量が過剰だと気道内圧は上昇する
  • 誤って片肺挿管すると肺容量が半分となるため気道内圧は上昇する
  • 過度のPEEP圧の付加は気道内圧の上昇をまねく
  • 患者が咳き込むと気道内圧は上昇する
  • 気管支痙攣により気道が狭窄をきたし気道内圧は上昇する
  • 患者の肺・胸郭コンプライアンスが低下すると気道内圧は上昇する
  • 加湿過剰により蛇管内に水が貯留すると回路内圧は上昇する
  • 呼気弁の動作異常により閉鎖したままとなっている場合(開放不良)
  • 呼気側に装着したフィルタの閉塞
  • 自発呼吸の出現
      • ファイティングを起こし、自発呼吸の呼気と人工呼吸器の吸気がぶつかり合うと閉塞と同等な状態となる。
  • 人工鼻の閉塞
      • Yピースと、気管チューブの間に装着する。人工鼻の閉塞も患者回路の閉塞を意味する。

 
 
気道内圧下限警報(低圧警報)

  • 一回換気量を定性的に監視する →頻回な警報は低換気状態に陥る。
  • 設定値は最高気道内圧の20%低い値。

 
<低圧アラーム原因>

  • 呼吸器内部でリークしている場合
  • 呼気弁のバルーンの破損や、動作異常により呼気弁が完全に閉鎖していない場合
  • 呼吸回路(蛇管)の各接続部の緩み、外れによりリークしている場合
  • 蛇管が破損してリークしている場合
  • カフ漏れ
  • 呼気弁の閉鎖不全
  • カスケード型加温加湿器のフタの緩み、パッキングの劣化などによるリーク
  • 挿管チューブ(気切チューブ)と呼吸回路のはずれ
  • カフ付き挿管チューブ(気切チューブ)のカフ圧低下、カフの破損によるリーク
  • 挿管チューブ(気切チューブ)が患者気道から抜けたり、抜けかかっている場合
  • ウォータートラップのふたの緩み、割れによるリーク

 
 
呼気分時換気量上限警報

  • 過換気はCO2を過剰に排泄させる →PaCO2の低下、pH上昇。
  • 頻呼吸は呼吸筋疲労の原因となる。
  • 設定は目標とする分時換気量より20%高い値。

 
呼気分時換気量下限警報

  • 呼吸回路のゆるみがあるとガスが呼吸回路外に排出し、換気量が低下する。分時換気量は換気量×呼吸数で算出でき、分時換気量低下アラームが生じる。
      • 低換気の早期発見(SpO2や心電図では低換気状態の早期発見は難しい)。
  •  設定は目標とする分時換気量より20%低い値。

 
<呼気分時換気量低下の原因>

  • 片肺挿管
  • 呼吸回路の接続外れ
  • 気道抵抗増加
  • 肺コンプライアンスの低下
  • 回路の閉塞、屈曲
  • 気管チューブの閉塞
  • ファイティング
  • 回路からのリーク
  • 気管チューブからのリーク
  • 自発呼吸の減少、停止
  • 呼気弁の閉鎖不良
  • 換気流量計の異常

 
呼吸回数上限アラーム

  • 呼吸回数上限は呼吸回数が異常に上昇したときに発生する警報である。
  • 原因としては自発呼吸の出現や頻呼吸、ファイティング、トリガ感度が鋭敏になっていることなどが考えられる。

 
無呼吸アラーム

  • 自己抜管時、人工呼吸器に呼気が戻ってこないため、呼吸停止と判断し、無呼吸ラームが生じる。
  • 無呼吸警報は、CPAP などで自発呼吸の突然の停止により一定時間経過後に発生する。
  • これに備えてバックアップ換気換気の設定を行っておく必要がある。

 
酸素濃度上昇アラーム

  • 100% 酸素と圧縮空気を混合し、吸入気酸素濃度を調節する。圧縮空気の停止または接続不良によって、高濃度酸素が供給され、酸素濃度上昇アラームが生じる。

 
PEEP / CPAP圧下限アラーム

  • PEEP/CPAP 圧下限は PEEP の圧が設定された下限値より下回ったときに警報が発生する。
  • PEEP 圧が下がる原因としては患者の吸気努力が強い、ファイティング、PEEP弁の不良などがある。

 
人工呼吸器アラーム その他

  • 加温加湿器使用中のヒーターワイヤが断線 →断線アラーム
  • 人工鼻の気流抵抗増加 →回路内圧上昇アラーム
  • 気管チューブスリップジョイント脱落 →低吸引圧アラーム
  • プロポフォール投与開始 →低分時換気量アラーム
  • エアコンプレッサの電源入れ忘れ →空気圧低下アラーム

 
 
【使用法と保守点検】

  • 人工呼吸装置を使用する際には、使用前、使用中及び使用後に添付文書及び取扱説明書 に従って点検を行わなければならない。 また、点検後の記録を保管する必要がある。

 
始業点検(使用前点検)

  • 使用前点検は、使用前に人工呼吸装置及び加温加湿器等の付帯するすべての機器が、安 全に動作することを確認しなければならない。
  • 呼気弁出口部を手で塞ぎ、高圧警報が発生するかを確認する。
  • 電源プラグをコンセントから抜き、バッテリ駆動に切り替わることを確認する。
  • 呼吸回路のリークテストを行う。
  • テスト肺を用いてすべての換気モードが適正に動作する事を確認する。
      • アダプタプラグの破損の確認
  • 加温加湿器チャンバの水温の確認

 
使用中の点検

  • 使用中点検は、人工呼吸装置の使用中に、 人工呼吸装置及び加温加湿器等の付帯する全ての機器が運転条件等の設定どおりに動作 していることを確認しなければならない。
  • ウォータトラップの貯留水を確認する。
  • 蛇管内の水滴を確認する。
  • 加温加湿器チャンバの水温の確認

 
終業点検(使用後点検)

  • 使用後点検は、人工呼吸装置の使用後に、人 工呼吸装置及び加温加湿器等の付帯するすべての機器の清掃・消毒・滅菌、外観点検を 行い、破損や欠品がないことを確認しなければならない。
  • 消毒薬での清掃

 
定期点検

  • 定期点検は、人工呼吸器の安全性および性能を維持するために、部品や消耗品の交換およびオーバーホールを行うことである。
  • 始業点検よりさらに詳細な点検を測定機器など用いて行う必要がある。
      • バクテリアフィル夕、ファンフィルタなどの交換
      • パッキン、Oリングの交換
      • 接地漏れ電流および患者漏れ電流など電気的安全の点検
      • アダプタプラグの破損の確認
      • 設定酸素濃度の実測および点検・調整、センサの交換
      • 測定装置を用いて、換気量、気道内圧、換気回数、流量、吸気時間、温度センサな どの測定を行い、必要があれば部品交換や調整

 
テスト肺を用いる点検

  • テスト肺を用いた人工呼吸器の点検は、人工呼吸器を一定条件で動作させて次の項目について行う。各換気条件の設定値と実測値の比較では、人工呼吸器に内蔵されているモニタ機能を用いる。
      • 設定した換気モードで適正に動作していること
      • 設定された換気量と呼気換気量が一致すること
      • 設定された吸気圧と最高気道内圧が一致すること
      • 設定された換気回数と実測した換気回数が一致すること
      • 設定された PEEPと気道内圧計の表示が一致すること
      • その他、設定された吸気時間、吸気流量などが呼吸器のモニタ値と一致すること
      • テスト肺で陰圧を作り、トリガ機構が動作し補助換気が開始されること