【ネブライザ】
- 吸入療法は、薬剤(水溶液)をエアロゾルに変え、鼻咽頭、上気道、小気道、肺胞へ到達させる。
- その役目は、加湿や清浄、気管支拡張および炎症の鎮静の治療に使用する。
- 薬剤の粒子の直径が5μm以上を大粒子(咽頭)、1~5μmを中粒子(上気道~小気道)、1μm 以下を小粒子(肺胞)、0.1μm以下を微粒子(肺葉)といい、それぞれの部位まで到達する。
- ネブライザの種類には、ジェット式、超音波式、メッシュ式、定量噴霧式、ドライパウダー式がある。
- ネブライザは、加温加湿器を人工呼吸器と併用できる。ただし、人工鼻との併用は禁忌である。
【使用目的】
- 吸入療法
- 気管支の拡張、気道内分泌物の溶解・喀出などを目的として各種薬液をエアゾルにし、患者の自発呼吸または器械で肺内に送り込むことによって治療する療法をいう。
- 加湿療法
- 気道内分泌物を柔らかくし、気道線毛上皮の機能を維持する目的で、滅菌精製水をエアゾルにし、患者の自発呼吸または、器械で肺内に送り込むことによって加湿する療法をいう。
【ジェットネブライザ】
- ジェット式の粒子径は一般に 10μm程度と超音波式と比べ大きく、鼻腔、咽喉頭など上気道に沈着しやすい。
- ジェット式ネブライザの原理は、ベンチュリ効果(ベルヌーイの定理)を用い、高流 速(ジェット気流)を発生させ、毛細管から薬液を吸い上げパッフルに衝突させてエ アロゾルにしている。粒子径は、1~15μm程度である。
- エアコンプレッサはジェット式ネブライザに使用される。
- 空気はエアコンブレッサに取り込まれて圧縮され、薬液槽に設けられたノズルを通してさらに流速を増す(ジェット気流の発生)。
- ジェット式はベンチュリー効果を用いて、毛細管内を上昇してきた薬液を高速気流に乗せた後、バッフルに衝突させエアロゾルを発生させる。
【超音波ネブライザ】
- 超音波式は、超音波振動子で、発生させた振動を水槽と薄いダイアフラムを通して薬液槽に伝え、伝達された機械運動エネルギーによって薬剤に分子運動が発生し、エアロゾル化する。
- 超音波ネブライザの振動子とダイアフラムの間のリザーバ内は、滅菌蒸留水を使用する。
- 超音波ネブライザは超音波振動により薬液を粒子化して患部に到達させるもので、下気道や肺胞の疾患に適する。
- 超音波式で、は薬物の種類によっては超音波振動で変性・分解するので、注意が必要。
- 超音波ネブライザのリザーバの水もセラチア菌などにより汚染しやすい。
- 超音波ネブライザの粒子径は 0.5~5μm と小さいため、下気道、細気管支、肺胞にまで到達し沈着する。
- 超音波式では、粒子径が小さく、比較的均一のため下気道や肺胞の過剰加湿を生じやすい。
【メッシュ式ネブライザ】
- メッシュ式ネブライザは超音波振動を利用するが、キャビテーション効果を用いる二槽構造の超音波式ネブライザとは大きく構造が異なる。
- 噴霧部は振動の発生するホーン振動子と多数の微細孔をもつメッシュで構成されており、ホーン振動子の振動する部分とメッシュの隙間にある薬液が、即時にホーン振動子の振動によりメッシュの穴から押し出され、霧が発生する。
- 二槽構造の超音波式ネブライザに指摘されているような作用槽の冷却水の温度上昇と薬液の性質変化の心配がない。
- メッシュ式ネブライザは装置を傾けて使用でき、臥位に限らずどのような姿勢でも吸入できる。
【加圧噴霧式定量吸入器】
- スペーサは、加圧噴霧式定量吸入器に使用されている。
- スペーサは加圧噴霧式定量吸入器で使用する。噴霧されたガスをスペーサ内に貯留し、吸気に合わせて吸入することで吸入効率を上げる。
【ドライパウダ定量吸入器】
- ドライパウダ式は、吸気動作によって起こるプロペラの回転により薬剤の微粉末を吸入する器具である。
- 粒子径は、6μm未満である。
- 吸入に際して定量噴霧式とは異なり、薬剤噴霧のために呼吸を同調する必要もなく、スペーサーも不要である。
- ディスカスタイプとタービュヘイラータイプがある。
【NO(一酸化窒素)吸入療法】
- NO (一酸化窒素)吸入療法は、平滑筋拡張作用を持つNO を、吸気ガスに添加させる。
- 期待できる効果
- 肺胞周囲の毛細血管を拡張させる
- 肺動脈圧の低下
- 換気血流比の改善
- 肺内シャントの改善
- 平滑筋弛緩に関与しなかった NO は、血管内で、ヘモグロビンと結合し、数秒で不活化されるため、全身血管には作用しない。
- NO ガスが到達した肺胞周囲の血管のみを選択的に拡張させる
- 適応
- 新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全の改善
- 心臓手術または先天性横隔膜ヘルニアの周術期における肺高血圧の改善
- 治療は1~40ppm 程度に濃度を調整して使用する。