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呼吸回路

 【呼吸回路構成】
  • 人工呼吸の患者回路構成は、人工呼吸器(本体)の送気口から患者、患者から呼気ガ ス排出口までのガスの経路部分を呼吸回路と言う。
  • 患者呼吸回路(蛇管)、加温加湿器、 人工鼻、患者接続口 (Yピース)、ウォータトラップ、バクテリアフィル夕、呼気弁、気道内圧計、換気量計などで構成されている。

 
 
【人工鼻】

  • 人工鼻は、患者の呼気中の熱と水蒸気を人工鼻内の吸湿物質である繊維や紙により捕捉し、吸気ガスに放出することで加温加湿する。
  • 加湿効率は加温加湿器に比べ劣るが、取り扱いが簡便で呼吸回路が結露しないなど優れた点が多い。
  • 人工鼻とネブライザの併用は人工鼻内のフィルタ部が閤塞するため呼吸抵抗が増加するため禁忌である。
  • Yピースと気管チューブの聞に取り付ける。
  • 機械的死腔量が増加する。
  • 呼吸回路内には結露が発生しないため、ウォータートラップは必要としない。
  • 気道内に分泌物が多い場合は、分泌物が人工鼻 を塞いでしまい、換気ができなくなる。
  • 分時換気量が多い場合や気道リークがある場合は加湿が不足するため使用できない。

 
 
【加湿器】

  • 加温加湿器は、加湿方法の違いから表面通過型と灯心型の2種類が用いられる。
  • 加湿されたガスが吸気回路を通過する間に冷えて結露することを防ぐために、吸気回路を温めるホースヒータを設置する場合もある。
  • 呼吸管理中にネブライザを使用する際は加温加湿器と併用する。
  • 加温加湿器の貯水槽には滅菌水を用いる。
  • 加温加湿器の合併症にうつ熱、気道粘膜熱傷、過剰加湿がある。
  • 貯水槽は細菌汚染の元なる。

 
Wick

  • ろ紙が温水を吸い上げて蒸発させる。

 
パスオーパ型

  • 送気ガスと加温した水面で、接触させて湿度を加える。

 
カスケード型

  • 別名バブル型とも呼ばれる。
  • 加温した水の中へ送気ガスを導き、小孔より細かな泡状のガスとして温水と接触させ、水蒸気で飽和させる。

 
 
【ホースヒータ付き人工呼吸器回路】 

  • 貯水槽の加温と呼吸回路内のヒータワイヤによって温度を調節する。
  • 貯水槽を生体温度と同等程度に加温して、回路内のヒータによって呼吸回路を貯水槽よりも数℃高く管理することで、呼吸困路内の相対湿度を低く保ち、呼吸回路の結露を防止する。
  • ウォータトラップは不要である。
  • 患者気管内では再び生体温度まで低下することで相対湿度 100%のガスを供給することができる。
  • 回路内の結露を防止するため、ヒータワイヤの加熱によってガスを加温して相対湿度 を下げる。
  • ホースヒータ付き人工呼吸器回路では、貯水槽を生体温度と同等に加熱する。
  • 回路内は加熱によって温度が上昇しているが、温度上昇では純対混度は変化しない。
  • 回路内は加熱によって温度が上昇しているため、飽和水蒸気量が上昇し相対湿度は低下する。
  • 回路温が貯水槽温よりも低くなると飽和水蒸気量の低下によって結露が生じる。

  
 
【コンプレッションボリューム (compression volume ; CV)】

  • 呼吸回路は、比較的柔らかい材質でできているため、回路内圧が高くなると回路自体が膨張し、その膨張した分の吸入気が回路に貯留して、患者には送気されず量的な損失となる。
  • この損失となる量をコンブレッションボリューム (compression volume ; CV)ある は圧縮容量という。
  • 特に量規定換気の場合は、コンプレッションボリュームが生じた分 だけ換気量が低下するため、注意が必要である。
  • 1回換気量の少ない小児では、コンプレッションボリュームの影響が大きいため、PCVを用いる。
  • ウォータトラップは、呼吸回路の一部であるため、 CVに含まれる。
  • 小児では成人よりも 1回換気量が少ないため、CVの影響が大きくなる。
  • 回路が長くなると、CVは大きくなる。
  • 量規定換気では、CVによって呼吸回路が膨らんだ分、肺胞換気量が減少する。
  • CVは換気量に影響を及ぼすが、吸気相呼気相比 (I / E比)には影響しない。

 
 
【ウォータトラップ】 

  • 吸気側に優先して組み込む(呼気側にも追加して組み込むこともある)
  • 回路内に発生した結露水を集める。
  • 呼吸回路の一番低い位置に設置する。
  • ヒートワイヤ組み込み回路では不要

 
 

【ジャクソンリース回路】

  • ジャクソンリース回路は用手人工呼吸器の一種であり、バッグ、蛇管、 Tピース、ガス排出バルブで構成される
  • 患者搬送時、麻酔中、人工呼吸器トラブル時の代用などに用いられる。
  • バックは柔らかく患者の自発呼吸は感知できる。
  • バックサイズと手技者のバックを加圧する力加減で1回換気量を調整できる。
  • 未熟児・新生児から大人まで使用可能である。
  • ガス流量が少ないとバックの膨張不足や再呼吸の危険が生じる。
  • 分時換気量の 2~3 倍の酸素の供給が必要となる。
  • 濃度100%の酸素投与が可能である。
  • 適正ガス流量は、患者が要求する分時換気量の 2~3 倍である(成人で10~15 L /分程度)
  • ジャクソンリース回路は分時換気量の 2~3 倍の酸素流量を流して呼気の再呼吸を防止し、ガス排出口のバルブ開閉度を調節することでバッグの膨らみを調整する。
  • バッグを加圧するときの感触で患者の肺の硬さを知ることが出来るのでICUでは繁用される。

 
 
【バックバルブマスク】

  • バッグバルブマスクは、口・鼻を覆うマスクでの人工換気と気管挿管および気管切開 カニューレにも使用(接続)可能な用手人工呼吸装置である。
  • 加湿は必要ではない。
  • 特別なガス源は不要であり、自動膨張により室内気を取り込む。
  • 酸素の供給も可能である。
  • 自動膨張式のため加圧時は膨張する力に逆らってバッグを押すので患者の肺の硬さを知ることはできない。
  • 患者の体格によりバッグの大きさを使い分けられ、大人から小児まで使用が可能である。
  • バックバルブマスク(蘇生バック)には一方弁が必要となる。
  • 弁機能を有することで呼気ガスはバッグ内に戻らずに排出される。弁機能に異常があると必要な換気量が確保出来ない。
  • 更に呼気が排出されずに肺内にガスが貯留し、気胸となる可能性もある。