【気管吸引】
- 通常、気道内の異物は気道粘膜の線毛運動によって気道外に排出されるが、人工呼吸器装着患者では線毛運動が障害されているため、喀痰の排出が行えない。そのため、気道を浄化し、気道の開放性の確保と維持のために気管吸引を実施する。
- 気道に吸引カテーテルを挿入するため、患者にとっては侵襲的で苦痛を伴う。短時間での有効な略疾の除去が重要となる。
- 2021年4月の厚生労働省医政局長通達により、臨床工学技士も「人工呼吸器装着中の患者に対する吸引」を実施できるようになった。
- 時間を決めて実施するのではなく、必要なときに吸引を実施することが重要である。
- 不必要な吸引は患者に苦痛を与えて合併症の可能性を高めてしまい、吸引が必要なときに吸引が実施されなければ病態が悪化する可能性もある。
- 吸引を行う必要があるかどうかを適切にアセスメントする必要がある。
- 吸引カテーテルの径が大きいほど吸引効果は高くなるが、気道内に過剰な陰圧がかかり無気肺を生じる可能性がある
- 吸引前に人工気道(気管チューブなど)のカフ圧を下げてしまうと、カフ上部に貯まった分泌物が気道内に流入し人工呼吸器関連肺炎 (VAP) の原因となる。
- 陰圧を加えたまま挿入すると、吸引カテーテル先端が人工気道(気管チユーブなど)の内面に吸着して、目的とする位置まで吸引カテーテルを進めるのが困難となる(カテーテル先端が気管分岐部に当たらない位置まで挿入する)。
気管吸引手技
- 自発呼吸がある患者では吸気時に吸引カテーテルを気道に挿入する。
- 閉鎖式・開放式どちらの場合であっても、挿入中は吸引の陰圧を止めておく。
- 吸引の手技は、圧をかけながら吸引カテーテルをゆっくり引き戻す。ピストン運動は、気管壁を損傷する恐れがある。
- 吸引圧は、-16~-20 kPa (-120~-150 mmHg) に設定。
- 吸引時間は、 10~15 秒。
- 吸引カテーテルのサイズは、人工気道の内径の半分を最大としてそれ以下のものを使用する(成人で 6 ~ 12Fr. 幼児で 6Fr. 以下)
- 吸引カテーテル先端が気管分岐部に当たらない位置まで挿入し、徐々に引き上げながら吸引する。
- 成人においては口角から 22~28 cm、鼻腔から 24~30 cm、声帯下から10~13 cmで気管分岐部に到達する。
気管吸引の合併症
- 気道粘膜の損傷
- 低酸素血症
- 不整脈・徐脈
- 血圧変動
- 呼吸停止
- 頭蓋内圧亢進
- 気管支壁縮
- 感染症
- 無気肺