【血液ガス分析】
- 人工呼吸がうまくいっているかどうかの最終的確認は、患者の動脈血血液ガスにより判定される。慢性呼吸不全のない患者には通常以下のような値を目安にする。
- Pa02 = 80~150mmHg
- PaC02 = 35~45mmHg
- pH = 7.35~7.45
※血液ガス分析について 補足
- 電極は以下の測定原理を利用
- pH電極(ガラス電極)
- PCO2電極(セベリングハウス電極)
- PO2電極(クラーク電極)
- pHは水素イオン濃度の逆数の対数で表される。
- サンプルを温めて保存すると血球の代謝によって分析値に誤差を生じるため、保存する場合は冷やす。
- 血球の代謝によってPO2とpHは緩やかに低下、PO2は上昇する。
- 採血後のサンプルは空気に触れないように密閉を行う。
- 酸素分圧とヘモグロビン酸素飽和度はS字状の飽和曲線を示す。
- 重炭酸イオンの増加に伴いpHは増加する。
PaCO2の規定
- PaCO2 は、次に示す肺胞換気式によって規定される。
- PaCO2 = 0.863 × 二酸化炭素産生量 [mL/min] / 肺胞換気量 [L/min]
- 二酸化炭素産生量は、患者の代謝状態などによって変化する。
- 肺胞換気量は、分時換気量から死腔換気量を引いた換気量となる。死腔換気量は、解剖学的死腔(鼻腔、口腔、気道など)と生理学的死腔(換気はされるが血流のない肺胞)からなる。
- 分時換気量は、1 回換気量と換気回数で決まる(分時換気量=1回換気量×換気回数)。人工鼻やカプノメータ(メインストリーム方式)などは、器械的死腔と見なすことができる。
PaCO2低下の原因
- 1回換気量を増加させる。
- 器械的死腔を減少させる。
PaCO2上昇の原因
- 換気回数を減少させる。
PaO2低下の原因
- PEEP(呼気終末陽圧)の減少。
- 吸入酸素濃度の低下
PaO2上昇の原因
- 吸入酸素濃度の増加。
- 吸気終末休止を負荷する。
【パルスオキシメータ】
- パルスオキシメータは、心拍動に伴う動脈の血液量の変動を光によって検出し、連続的かつ無侵襲に動脈血の酸素飽和度を測定する装置である。
- 酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの赤色光・赤外光に対する吸光特性の相違を利用し、心拍動に伴う脈波を指先などで検出して、収縮期における動脈血の増加分にランベルト・ベールの法則を適用することで、動脈血の酸素飽和度を求めている。
- 校正や補正の必要がなく、プローブ装着後に直ちに計測が可能である。
- プロープを長時間装着していると、プローブによる圧迫や粘着性テープの影響で、皮膚に発赤がみられることがある。そのような場合は、プロープの装着位置を適宜変える必要がある。
- 乳幼児は足の指が小さいため、足の甲にディスポーザブルのプローブを装着する。
- 人工心肺施行中は動脈の拍動が生じない。動脈の拍動が生じなければ計測はできない。
- 一酸化炭素中毒で、は一酸化炭素ヘモグロビンが多くなり、誤差が大きくなるためパルスオキシメータによる酸素化の評価は難しい。
測定値に影響する
- 誤差要因として、一酸化炭素ヘモグロビン(カルボキシヘモグロビン)やメトヘモグロビンの存在や、検査用色素(メチレンブルー・インドシアニングリーンなど)の使用がある。
- 一酸化炭素ヘモグロビンの赤色光に対する吸光特性は、酸素化ヘモグロビンと同程度とされているため、酸素飽和度の値が基準値内でも一酸化炭素中毒で、はヘモグロビンが酸素と結合していない場合があるため、注意が必要である。
- 爪にマニキュアを塗布している場合、マニキュアの色(特に緑色・青色・茶色)によって光が吸収され、誤差を生じることがある。
【カプノメトリ】
- カプノメータは、呼吸回路の Y ピースと気管チューブの間に装着することで、呼気の二酸化炭素濃度をほぼリアルタイムで波形化する生体情報モニタである。
- 換気異常(呼吸回路の外れ、気管チューブの閉塞など)が発生した場合、速やかに異常を検出する。
- 呼気終末二酸化炭素分圧 (PETCO2) の測定にはカプノメータが使用される。
- カプノメータは呼気ガス中の二酸化炭素の分圧(濃度)を測定し、換気状態をみるための装置であり、一般的に二酸化炭素の分圧の変化を連続的に波形(カプノグラム)で表示する。
- 肺胞気二酸化炭素分圧は、動脈血二酸化炭素分圧 (PaCO2) とほぼ同値をとることから、麻酔管理中あるいは人工呼吸管理中の PaCO2 連続モニタリングとしてカプノメータが使用されている。
- 基準値は 35 ~ 45 mmHg である。
メインストリーム方式
- 呼吸回路内にセンサーをもち、そこで炭酸ガス濃度を測定する。
- 赤外線吸収法 : 赤外線を良好に吸収することを利用
<利点>
- 測定の反応性が良い
- 水滴混入による測定誤差が少ない
<欠点>
- 非挿管患者には測定不可
- センサーなどが死腔となる
サイドストリーム(ガスサンプリング)方式
- 毎分50~200ml/minの呼吸ガスがサンプリングされる。
- 呼吸回路の一部にサンプリングポートを設け、そこから一定速度で吸気ガスおよび呼気ガスを吸引し、測定器内部で炭酸ガスを測定。
- 算量分析法。
<利点>
- 非挿管患者でも測定可能
- 死腔が少なくて済む
<欠点>
- 測定の反応性が悪い
- 水滴混入による測定誤差がある
波形の変化
- 呼気終末二酸化炭素分圧 (PETCO2) の測定値を変化させる因子として代謝関連因子、呼吸関連因子、循環関連因子、機器に関連する因子(人工呼吸器、麻酔器など)が挙げられる。
- これらの困子により PETCO2の測定値の増加や低下が起こる。
ETCO2の上昇 | ETCO2の下降 | |
代謝関連 | □ CO2産生の増加 ・発熱 ・疼痛 |
□ CO2産生の低下 ・低体温 ・鎮痛 |
呼吸関連 | □ 肺胞換気量の低下 ・低換気 ・閉塞性肺疾患 |
□ 肺胞換気量の増加 ・過換気 □ 無呼吸 |
循環関連 | □ 肺血流量の増加 ・心拍出量の増加 ・敗血症 |
□ 肺血流量の減少 ・心停止 ・肺塞栓 |
機械関連 | □ 呼気弁の異常による再呼吸 ・1回換気量の不足 |
□ 呼気回路のリーク □ 過換気 □ 気管チューブの閉 |
その他 | □ CO2の供給 □ 二酸化炭素吸収剤の劣化 □ 二酸化炭素の気腹による腹腔鏡手術 |
□ 食道挿管 □ サイドストリーム法のサンプリングチューブの折れ曲がり |
【血ガス測定】
- 採血時にシリンジに気泡が混入したら気泡を除去する。
- 気泡を追い出してから回転混和する。
- 採血後は回路をフラッシュする。
- 採血後直ちに計測できない場合は氷水で保存する。
- 抗凝固剤としては感想ヘパリン入りの専用注射器が望ましい(やむを得ない場合はヘパリンナトリウムを注射器に少量吸う)
- 人工呼吸器の変更後すぐには測定値に反映はされないため、ある程度時間が経過してから採血を行う。
【グラフィックモニタ】
- PEEP 値は、気道内圧波形より測定できる。
- 各種波形(流量、換気量、気道内圧)の観察により推測することができる。
- 吸気時間の計測表示可能である。
- 静的・動的コンブライアンスを測定することができる。
- 肺内シャントの計測には、 100% 酸素吸入試験に加え、動脈血酸素分圧の測定は必要であるため、グラフィックモニタで評価することができない。