【死腔について】
- 解剖学的死腔
- 口腔または鼻腔から肺胞に至るまでの気道内容積。
- 成人の基準正常値は約150mL(約2.2mL/kg)
- 肺胞死腔
- 血流のない肺胞
- 換気があって血流が途絶した肺胞
- 肺胞死腔 = 生理学的死腔-解剖学的死腔
- 成人では約30~50mLの肺胞死腔がある
- 生理学的死腔
- 生理学的死腔 = 解剖学的死腔 + 肺胞死腔
- 健常人においては生理学的死腔≒解剖学的死腔となる
- 機械的死腔
- 人工呼吸器や回路やマスクなどの生体とのインターフェース部分のスペースを表す。
- 死腔換気率(VD / VT)1回換気量のうち死腔量の割合を示し、基準値は約0.3である。
- 肺血栓塞栓症では死腔が増加する。
- 呼吸細気管支はガス交換できるため、死腔ではない。
- 呼吸パターンにより死腔の減少や増大となる。
- 換気量が一定で死腔が増大するとPaCO2が上昇する。
- 死腔換気率は1回換気量の約30%である。
- 成人男性の1回換気量は約500mL、死空量は約150mLのため、150/500=0.3
【肺胞換気量】
肺胞換気
- 呼吸器の死腔を差し引いた肺胞に届いたガス交換に役立つ換気を肺胞換気と呼ぶ。
- 分時換気量 = 1回換気量 × 呼吸数
- 分時肺胞換気量 = (1回換気量-死腔量(150mL)) × 呼吸数
死腔
- ガス交換に関係のない無駄なスペースを死腔と呼ぶ。
- 死腔の増大によって体内のCO2レベルは上昇する。
- 肺動動脈に塞栓が生じると肺胞への血流が途絶えるためし死腔が増加する。
- 解剖学的死腔 : 肺に至るまでの気道内容積(鼻腔~終末細気管支)。約150ml
- 肺胞死腔 : 換気は有るが、血流が無いか、血流が乏しい肺胞
- 生理的死腔 : 解剖学的死腔+肺胞死腔
- 機械的死腔 : 人工呼吸器の回路、人工鼻などによる死腔
- 死腔換気率 : 死腔の1回換気量に対する割合(VD/VT)。正常値は0.3
例題)
- 1回換気量550mL、死腔量150mL、呼吸数15回/分のとき、分時肺胞換気量はいくつか?
- 肺胞で換気にあるかる呼吸器量を肺胞換気量といい、1分間の肺胞換気量を分時肺胞換気量という。死腔のため換気量すべてが肺胞換気量にあずかるわけではない。
- すなわち、以下の関係式が成り立つ。
- 肺胞換気量=1回換気量-死腔量
- 分時肺胞換気量=(1回換気量-死腔量)×呼吸数
- よって、計算を行うと
- 分時肺胞換気量=(550-150)×15= 6000mL/min
肺胞換気量
- 肺胞換気量は、CO2産生量とPaCO2によって表される。
肺胞気酸素分圧(PAO2)
- 肺胞内は、組織で生じた二酸化炭素が存在するため、吸入気酸素分圧(PIO2)に二酸化炭素の影響分を除く必要がある。
- 二酸化炭素の影響は、動脈血CO2分圧を呼吸商の0.8で割ることで得られる。
- ※吸入気酸素分圧が150mmHg、PaCO2が40mmHgとすると、肺胞気酸素分圧PAO2は、100mmHg(∵ 150-40/0.8)となる。
例題)
- 健常人が3気圧純酸素による高気圧酸素治療を受けたときに肺胞気酸素分圧(PAO2)はおよそ何mmHgであるか。
【酸素運搬】
動脈血の酸素運搬量に直接影響する因子
- 心拍出量
- ヘモグロビン値
- 酸素飽和度
末梢組織への酸素運搬能
- 血液中の大部分のO2は赤血球中のヘモグロビンと化学的に結合して組織に運ばれる。
- 1gのヘモグロビンは1.34mL O2と結合するから、健常者のヘモグロビン量を15g/dLとすると血液100mL当たり約20mLを結合する。
- したがって、ヘモグロビン量が増加すれば酸素運搬量は大きく改善する。
- 酸素運搬を大きく改善する変化
- ヘモグロビン濃度が増える。
- 心拍出量が増える。
- 心係数が増える。
- 酸素飽和度が増える。
【酸塩基平衡】
pH | 7.4±0.05 | HCO3- | 22±2mEq/l |
PaO2 | 80~100mmHg | BE | 0±2 |
PaCO2 | 40±5mmHg | SaO2 | 95%以上 |
【酸素解離曲線】
PO2とSO2の関係
PO2 | |||
100mmHg | 60mmHg | 30mmHg | |
SO2 | 100% | 90% | 60% |
- 肺や動脈のようなPO2が、高い(100~60mmHg程度)と多少のPO2の低下でも酸素飽和度は高値を維持する。言い換えれば、そこでは血中のヘモグロビンが酸素と結合しやすく放出し難いことを示している。
- 一方、組織のようにPO2が、低い(60mmHg以下)とわずかなPO2の低下で急激に酸素飽和度が低下する。言い換えれば、そこで大量の酸素がヘモグロビンから放出されることを示している。
右方偏位と左方偏位
- 酸素解離曲線は、血液のpHや体温などの影響を受け、解離曲線全体が右側・左側にシフトする。
<左方偏位>
- 体温低下
- PCO2低下
- pH上昇(アルカローシス)
- 2,3-DPGの低下
- 体外循環に伴う血液希釈
<右方偏位>
- 体温上昇
- PCO2上昇
- pH低下(アシドーシス)
- 2,3-DPGの上昇
- ※2.3-DPGは解糖系の中間代謝産物である。赤血球内に多く存在し、ヘモグロビンに結合し酸素の親和性を下げる作用がある。
- ※2.3-DPGが多くなると血液は酸素を解離しやすくなるので、解離曲線は右方移動する。
【酸素含量(CaO)】
- 血液100mlに含まれる酸素の量を酸素含量とよぶ。
- 血液中に含まれる酸素の量(酸素含量)は、赤血球中のHgと結合している酸素と血漿中に溶解している酸素を合計したもので次式で表される。
例えば)
酸素飽和度=100%、PaO2=100mmHg、Hg=14g/dlの時のHb結合酸素と血中溶解酸素
Hb結合酸素
=1.34×Hb[g/dl]×酸素飽和度[%]/100
=1.34×14×100÷100
=18.76
血中溶解酸素
=0.003×PaO2[mmHg]
=0.003×100
=0.3
- 血中の溶解酸素はわずかであり、組織に運ばれる酸素は①心拍出量、②酸素飽和度、③ Hb量 に規定される
- 心拍出量 : 心拍出量が多いほど多くのオキシヘモグロビンは多くの酸素を運搬できる。
- 酸素飽和度 : 高いほど、オキシヘモグロビン量が多くなる。
- Hb量 : オキシヘモグロビンが多いほど酸素を多く運搬できる。
- 酸素の運搬量 = 動脈血の酸素含有量 × 血流量
【肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)】
- 肺胞気酸素分圧と動脈血酸素分圧の差
- 肺胞における酸素の拡散の程度を反映するものであり、大気圧、空気吸入時には10mmHg以下となる。
- A-aDO2開大の原因 →Ⅰ型呼吸不全
- ガス交換障害
- 換気血流比不均等分布
- シャント
- 拡散障害
- Ⅱ型呼吸不全ではA-aDO2は開大しない。
- 高二酸化炭素血症を呈する。肺胞低換気のため酸素の拡散障害がないため。
- A-aDO2=PAO2-PaO2
- =PIO2-PaCO2/0.8-PaO2 [mmHg]
計算)【第28回】
FIO2 0.7でPaO2 150mmHg、PaCO2 40mmHgの時、およそのA-aDO2[mmHg]はいくつか。
※呼吸商:0.8
A-aDO2=PAO2-PaO2
=PIO2-PaCO2/0.8-PaO2 [mmHg]
=(760-47)×0.7-40/0.8-150
=299.1 [mmHg]