【有害事象・合併症】
気管挿管の合併症
- 気管潰瘍
- 声門浮腫 、声帯潰瘍、声帯麻痺
- 気管食道瘻
- 気道狭窄 、輪状軟骨狭窄
- 鼻咽頭の壊死
- 肉芽腫
- 片肺挿管
- 自己抜管
- 歯牙欠損
- 喉頭痙攣
気管切開の合併症
- 皮下気腫
- 皮膚潰瘍
- 気管食道瘻
肺の圧損傷による合併症
- 気胸
- 皮下気腫
- 縦隔気腫
肺加圧による循環器合併症
- 胸腔内圧上昇し、静脈還流(中心静脈圧・右房圧)減少
- 心拍出量及び血圧低下
- 腎血流量の低下により尿量低下
- 脳灌流圧が低下
- うっ血による肝機能障害
ストレスによる合併症
- 消化管に潰瘍形成
- 神経症状
【人工呼吸器関連肺炎(VAP)】
定義
- 人工呼吸器関連肺炎 (ventilator associated pneumonia : VAP) は人工呼吸管理前には肺炎のないことが条件となり、気管挿管による人工呼吸開始 48 時間以降に発症する肺炎と定義される。
- 予防のためには VAP バンドル(日本集中治療医学会人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010 改訂版)の実施が重要である。
概要
- 人工呼吸開始 48 ~ 72 時間以降に発症するものと定義されている。
- 人工呼吸器の呼吸回路の交換は、患者毎に行う。定期的な回路交換は、回路内腔を通じた下気道汚染の危険性が高まり、むしろ VAP 発生率を高くするため、目に見える汚れや破損がある場合のみ交換する。
- 定期的な回路交換を禁止するものではないが、7 日未満での交換は推奨されていない。
- 手指衛生を確実に実施する.
- 適切な鎮静・鎮痛をはかる。特に過鎮静を避ける。過鎮静は発症リスクが増加する。
- 人工呼吸器からの離脱ができるかどうか、毎日評価する。
- 人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない。
予防
- 口腔内から下気道への細菌流入は肺炎の原因となる。口腔内を清潔に保つことはVAP 予防に有効である。
- 仰臥位で患者を管理すると、胃内容物が口腔咽頭に逆流し、VAP の発生率が増加する。
- ベッドの頭位を上げる体位は、仰臥位と比較して VAP 発生率を低下させる。禁忌でない限り頭位を上げ、30 度を一つの目安とする。
【ファイティング】
- ファイティングとは、人工呼吸中に機械換気が自発呼吸との不向調により、患者呼気と 機械換気吸気が競合する現象であり、急激な気道内圧の上昇が生じる。
- ファイテイングが 発生すると吸気ができず換気不足となる。
ファイティングの原因
- 人工呼吸中での鎮痛鎮静薬や筋弛緩薬の投与が不充分な場合
- 呼吸モードの選択ミス
- トリガの動作不良や感度低
- 挿管チューブの折れ曲がり
- 喀痰など気道内の分泌物の貯
- 気管挿管中の咳運動(パッキング) など
【気管内チューブによる問題】
- 主たるものを挙げると : 接続はずれ、カフもれ、カフふくらませ過ぎ、皮下気腫、分泌物による閉塞、潰瘍、感染、出血、気管・食道痩、声門浮腫、声帯潰瘍など。
【人工呼吸器使用に関する注意点】
- 患者ごとに滅菌・消毒された呼吸回路を使用する。
- 感染防止のため、必ず回路は患者毎に滅菌・消毒された回路を使用する。
- 加湿器には滅菌蒸留水を入れる。
- 滅菌蒸留水を入れる。気道感染を防ぐためにも清潔操作に努める。
- ウォータートラップの位置は患者より低くする。
- ウォータートラップの位置は患者より低くする。ウォータートラップの目的は回路(蛇管)内に結露した余分な水分を取り除くことである。この取り付け位置を蛇管よりも下方にしなければ、余剰水分はトラップヘと溜まることができず蛇管内へ貯留する。また、トラップ内に溜まった水分が患者気道内へと流れ込まないように、やはりトラップは蛇管よりも下方に置かなくてはならない。
- 呼吸器本体の作動点検は呼吸回路組み立て後に行う。
- 作動点検は患者回路を全て組み立てた後にリーク点検、アラームの作動点検などを行う。
- 呼気側回路を組み立てら後に必ずリークテストを行う。
- 1バルブ方式では呼気弁の排出口やYピースを、または、呼気側排出口をふさぐことでリークテストを行うことができる。
- 人工呼吸器による呼吸管理において必ず、アンビューバッグは準備する。
- アンビューバッグは人工呼吸器のトラブル時や、患者回路(蛇管)交換時に必要。準備すべき器具は、酸素濃度測定器、換気量測定器、パルスオキシメータ、吸引器(中央配管、電気式)、アンビューバッグ、除細動器など。
- 人工呼吸器による呼吸管理では電気吸引器を準備しておく。
- 定期的に患者気道内の分泌物を吸引除去する必要があるため、もし中央配管による吸引設備がなければ、電気吸引器にて吸引を行う。
- 挿管チューブのカフ圧は25mmHg以下とする。
- 気管壁の毛細血管圧は25mmHg程度であるため、壁を圧迫するカフ圧がこれ以上できれば、毛細管血流障害を生じ、気道損傷を起こす。