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呼吸療法技術・総論

【自発呼吸と人工吸での肺・胸腔内圧の違い】
自発呼吸時

  • 生理的呼吸下の呼気相において胸腔内圧は、常に陰圧である。
  • 生理的呼吸下の吸気相において胸腔内圧は、常に陰圧である。
  • 自然呼吸下の肺胞内圧は、吸気相前半は陰圧であり吸気相末期にわずかに陽圧となり、呼気相も陽圧となる。
  • 生理的呼吸下の呼気相における肺胞内圧は、大気圧または陽圧である。
      • 生理的呼吸(自然呼吸)下の肺胞内圧は、吸気相前半は陰圧であり吸気相末期にわずかに陽圧となり、呼気相でも陽圧となる。

 
人工呼吸時

  • 人工呼吸下の胸腔内圧は、吸気開始時は陰圧であるが送気によって吸気相末期に陽圧となり呼気相では元の陰圧に戻る。
  • 人工呼吸下の肺胞内圧は、吸気開始時は PEEP 設定値であり吸気相は送気により陽圧が高くなる。呼気時は陽圧から PEEP 設定圧まで漸減する。
  • 人工呼吸下の呼気相において肺胞内圧は、大気圧または陽圧 (PEEP 設定圧)となる。
  • 人工呼吸下の吸気相において肺胞内圧は、大気圧または PEEP 設定圧からガスが送り込まれることにより陽圧が高まる。

 
 
【人工呼吸器の定義】

  • 生命維持の基本となるこれら肺における換気機能が不十分になったりし、完全に停止した場合、この機能を代行するものが人工呼吸器である。
  • 人工呼吸器は①主に換気の代行を目的として用いられることが多いが、②肺の病変でガス交換が阻害された場合には、ガス交換改善の目的で使用される。

 
換気

  • 呼吸筋の働きにより、①肺内に酸素を運び、②肺内から炭酸ガスを外気中に運び、捨てることである。

 
ガス交換

  • 肺内から血中に酸素を取り込み、血中から肺内に炭酸ガスを排出することである。

 
人工呼吸器の目的

  • 肺胞換気量の維持
  • 呼吸仕事量の軽減
  • ガス交換能の改善
  • 閉塞肺胞の開通
  • 機能的残気量の増加

 
 
【人工呼吸器の方式】
陰圧換気

  • 鉄の肺に代表されるように、体外から陰圧で胸郭を引っ張って広げ、肺を広げる生理的な方法。現在はほとんど使われていない。

 
陽圧換気

  • 気管内チューブを挿管し、ガスを陽圧で、送って肺をふくらませる方法。現在の人工呼吸器は陽圧換気方式によっている。
  • 陽圧換気は、循環器系、脳神経系、腎機能、肝臓・消化器系に対し、様々な影響を及ぼす。

循環器系への影響 □ 心拍出量減少
□ 脳灌流圧の低下
□ 静脈血還流減少
□ 肺循環血流量減少
□ 内頚静脈圧の上昇とともに、頭蓋内圧が上昇する。
□ 右房圧が上昇すると静脈還流の低下により肝血流は減少し、肝臓はうっ血する。
呼吸器への影響 □ 肺胞破裂
□ 縦郭気腫
□ 皮下気腫
□ 気胸
代謝系への影響 □ 尿量減少
□ 腎血流量低下
□ ADH分泌促進
精神への影響 □ 不穏
□ 抑うつ
□ ICU症候群
□ ストレスなどによる消化管の潰瘍形成

 
 
【肺内圧と胸腔内圧の変化】

  • 自発呼吸時の吸気相終末の肺内圧は陽圧である。
  • 自発呼吸、人工呼吸いずれにおいても胸腔内圧は常に陰圧である。
  • 呼気相中期の肺内圧は陽圧である。
  • 吸気相中期の肺内圧は陰圧である。
  • 吸気相開始直後の平圧から終末に向けて上昇する。
  • 人工呼吸下の呼気相において肺胞内圧は、常時陽圧となる。
  • 人工呼吸下の吸気相において胸腔内圧は、吸気開始時は陰圧であるが、吸気相末期に陽圧となる。
  • 人工呼吸下の呼気相終末の胸腔内圧は陰圧である。