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在宅呼吸療法(HMV)

 【在宅呼吸療法(HMV)】

  • 在宅人工呼吸療法(狂MV) とは、長期間にわたり持続的に人工呼吸に依存せざるを得ず、かつ安定した病態にある患者について、在宅において実施する人工呼吸療法のことである。
  • HMV 実施方法には陰圧式人工呼吸と陽圧式人工呼吸があるが、効果などの点より概ね陽圧式人工呼吸が施行されている。
  • 陽圧式人工呼吸には気管切開などによる侵襲的方法(TPPV) と鼻マスク、フェイスマスクなどを用いた非侵襲的方法 (NPPV) がある。
  • HMV における適応基準は基礎疾患、さらに TPPV、NPPV によっても異なるが、共通因子は低酸素血症が原因の高二酸化炭素血症を伴うⅡ型呼吸不全であるという点である。
  • 家族はHMV開始に至るまで1か月以上に及ぶ教育・訓練・実習などを経て HMVへの準備を整える。
  • 一般家庭には酸素や空気の配管が無いことから、人工呼吸器にシリンダやコンプレッサー等を内蔵し、駆動源は電源だけである。ただしこの場合は大気濃度と同等の酸素濃度(21 %)しか供給できないため、高濃度酸素投与する場合には酸素ボンベが別途必要となる。
  • HMVでは加温加湿器、人工鼻のどちらでも使用できる。

 
非侵襲的陽圧換気(NPPV)

  • 気管切開などによる気道確保をせずに、マスクを用いた陽圧換気である。
  • NPPV の利点として、気道確保に関連する危険の回避、人工呼吸器関連肺炎 (VAP) の予防、導入や離脱が比較的容易であること、食事や会話が可能であることが挙げられる。
  • 欠点としては気道分泌の多い患者では使用困難であり、誤嚥のリスク、マスク圧迫による発赤や潰瘍の形成、患者の協力が必要不可欠などである。
  • 顔面にマスクがフィットしない場合、マスクと顔面の聞からガスリークが起こり換気量が得られないため、NPPVの施行にはマスクフィッティングが重要である。
  • マスクを強く顔面に押し当てると顔面皮膚の潰瘍などのトラブルが発生する。
  • 喀痰量が多すぎる場合は誤嚥や窒息の可能性があるため、適応とならない。
  • 在宅人工呼吸器装着者におけるNPPV装着者数はTPPVより多い。
      • NPPV13488 名、気管切開下陽圧人工呼吸 (TPPV) 7700名。(在宅人工呼吸器装着者の都道府県別全国調査2021より)
  • 重度の睡眠時無呼吸症候群の患者に対しでも在宅で使用されている。
  • 在宅のNPPVの主な疾患はCOPD (慢性閉塞性肺疾患)、肺結核後遺症、神経筋疾患が多く、後側湾症は全体の5%である。(2001 年厚生省特定疾患呼吸不全研究班の調査より)
  • 最も適した疾患は、COPD 急性増悪、心原性肺水腫、免疫不全や免疫抑制下に伴う急性呼吸不全が挙げられる。
  • NPPVの適応基準
      • 神経筋疾患ではPaCO2が 50 mmHg、呼吸器疾患では 55 mmHg を超えると人工呼吸の導入を検討する。
      • 睡眠時に呼吸異常が高度であれば、前述よりも低い PaCO2で導入を検討する。

 
気管切開下陽圧人工呼吸 (TPPV)

  • 在宅人工呼吸療法の適応基準は、TPPV (tracheostomy positive pressure ventilation)の侵襲的方法と NPPV (noninvasive positive pressure ventilation) の非侵襲的方法では、異なっている。
  • TPPV の適応基準
      • 病状の安定が十分に確認されている
      • 人工呼吸器への依存があっても、肺胞低換気が優位なⅡ型慢性呼吸不全 (FIO2 = 0.40 以下で維持可能)である
      • 気管切開などで気道確保が十分に得られている
      • 用手人工呼吸(バッグバルブマスクなど)でも呼吸状態の補助が可能である。
      • 意識レベルが清明で、明確に意思および感情が表現できる。

 
 
【酸素療法】

  • 酸素療法とは、マスクやカニューレなどを用いて、患者へ酸素投与することで吸入気の酸素濃度を高め、 PAO2 (肺胞気酸素分圧)を上昇させることで、動脈血の酸素化を図り低酸素血症を改善する。
  • 高濃度酸素の吸入中にタバコ等の火気を近づけると、チューブや衣服等に引火し、重度の火傷や住宅火災の原因となる。医療施設・自宅など場所に関係なく、酸素療法中は火気の取り扱いは厳禁である。
  • 酸素は、可燃物質の燃焼を助ける支燃性ガスである。
  • デマンドバルブを自発呼吸の吸気に同調して送気弁を開閉することで、酸素ボンベの酸素消費量を節約でき、通常の2~3倍程度使用時間を延長させることができる。

 
合併症

  • 未熟児網膜症
      • 未熟児への高濃度酸素投与は網膜症の発症リスクを増大させる。
  • 呼吸抑制
      • 呼吸中枢では血中の酸素及び二酸化炭素濃度よって呼吸をコントロールしている。
      • COPDなど慢性的に PaCO2 が高い患者では、二酸化炭素による反応が抑制されるかわりに、酸素に対する反応は鋭敏となる。そのような状態において高濃度酸素を投与すると、血中の酸素分圧が上昇して呼吸抑制がかかる。
  • 酸素中毒
      • 50 ~ 60% 以上の高濃度酸素を継続的に投与することで、気道粘膜や肺胞が障害され、重篤な場合は呼吸不全に陥る。
      • 発症機序は高濃度酸素により活性酸素(フリーラジカル)が増加し、肺毛細管上皮の障害による。
  • 吸収性無気肺
      • 高濃度酸素投与中に気道が急性に閉塞されると,閉塞された気道の末梢肺を循環する毛細血管から血液が酸素を吸収するため,肺胞の容積が減少し無気肺となる。

  
 
【人工呼吸】 

  • 適応基準は低酸素血症の原因が高二酸化炭素血症と伴うⅡ型呼吸不全である。
  • 気管切開患者は適応である。
  • 家族はHMV開始に至るまで、1ヶ月以上に及ぶ教育・訓練・実習などを経てHMVへの準備を整える。
  • 一般家庭には酸素や空気の配管がないことから、人工呼吸器の中にシリンダなどを設置し、駆動源は電源だけである必要がある。
家庭で備えるべき器具 医療機関が具備すべき機器
□  パルスオキシメータ
□  用手式人工呼吸器
□  吸引器
□  血圧計
□ 心電図モニタ  など
□   胸部エックス線撮影装置
□   気道内分泌物吸引装置
□   動脈血ガス分析装置
□   酸素吸入設備
□   気管内挿管または気管切開の器具
□ レスピレータ(人工呼吸器)   など

 
 
【ボンベ】

  • 液体酸素は、容器内の液体酸素を少しずつ気化させることで酸素を供給する酸素器具である。
  • 通常の酸素ボンベに比べ小型かつ軽量であり、比較的長時間使用できることから在宅や外出時に使用される。

 
ガス容量

  • 酸素ボンベ(内容量10L鋼製)内の圧力が14.7MPaのおよそのガス容量(L)はいくつか。
  • 鋼製の酸素ボンベの最大充填圧力は、14.7MPa (約 150気圧)である。
  • 次の式より、
      • ボンベの内容量 (L) × ボンベ内圧 (MPa) × 10.l97 =ガス容量 (L)
      • 10(L) × 14.7 (MPa) × 10.l97= 1499L ≒ 1500L となる。
  • ボンベ内圧を測定することにより、酸素残量がわかる。その残量より使用可能時間なども計算できる。
  • 日本での医療用酸素ボンベ(鋼製)には、内容量 3.4L (ガス容量 500L)、10L (1500 L)、40L (6000 L)、47L (7000 L)が使用されている。